野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

I Never Give Up!

朝から宿の温泉に入り、旅館の卓球までして遊び、すっかり休暇のようですが、鳥取の鹿野で仕事中です。「ことばのはじまり」の公演1日目。大勢のお客さんのエネルギーを感じて、京都公演とも三重公演とも違った要素が生まれました。9回目の公演にして、初めてアフタートーク。ディディエだけ出ればいいかと思ったのですが、ディディエの要望で、俳優の坂口さん、ダンサーの松尾さん、音楽家の野村も参加しました。演出家1人が語るのではなく、そこに俳優もダンサーも音楽家もいる、ということが、ディディエにとって重要なのです。

アフタートークが終わって、ぼくがパン屋に行こうと歩いていると、ディディエがやって来て「パン屋に行くの?」と、追いかけてきた。そして、ご機嫌に語る。

「この作品は、明日で終わりなんて、あり得ない。毎回、上演する度に、こんなに豊かに変化してくれる。ぼくたちは、まだスタート地点に立ったところだ。続けていったら、どうなっていくのか、もっとやりたいよね。」

ぼくは、もちろん、来年以降も続けていくべきだ、と強く答える。それを実現するには、もちろん、色々なハードルはあるだろうけれど、、、。ディディエによると、今回の「ことばのはじまり」のプロジェクトは、フランス政府の助成金文化庁助成金などが得られなかったので、ディディエは、実現は無理だと、がっかりして諦めかけた時、アトリエ劇研で、「ことばのはじまり」のプロデューサーである杉山準さんから、「ぼくは決して諦めない」というメールが来たのだそうです。このエピソードにも、心打たれました。

「鳥の演劇祭」の他の作品も鑑賞し、その後、フェスティバルのパーティーで他のアーティストとも交わました。とても雰囲気の良いフェスです。そして、宿に戻って、語り合う。ディディエが言う。

「多くの舞台作品は、きめ細やかに細部までフィックスしていって、フィックスし過ぎて、パフォーマンスが死んでしまう。ぼくらの舞台は、フィックスしている要素もいっぱいあるけれども、変化できる余地を残しているから、パフォーマンスが何度繰り返しても、生きているんだ。そのことが何より重要なんだ。」

明日が最後の本番です。9回の公演を経て、大変作品はスムーズで手堅く完成していると思いそうですが、「ことばのはじまり」チームは、さらに、明日の舞台でも、積極的に、変えられるところを変えようとしています。

「あのシーンのあそこ、もうちょっと〜〜〜〜かな」
「でも、〜〜〜〜かな」
「明日、それでやってみるか」

明日のステージも、生きたパフォーマンスになりそうです。