野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

地味な楽器のための協奏曲

この4月、日本センチュリー交響楽団のコミュニティプログラムディレクターに就任しました。就任と言っても、この楽団から給料をもらっているわけではないので、常勤の職員ではありません。しかし、かなり多くの仕事をし、その仕事では、日本センチュリー交響楽団の上記ポジションの者として、仕事をすることになります。で、本日は、その肩書きにより行うワークショップの二回目。

用意していた楽譜「ゲンダ・ゲンカン1」と「ゲンダ・ゲンカン2」を、ハローライフ所属の若者達と、日本センチュリー交響楽団所属の音楽家達の混成メンバーで演奏しました。「ゲンダ・ゲンカン」は、やってみて分かったのですが、これは画期的なコンチェルト(協奏曲)です。通常、コンチェルトというのは、演奏技術の卓越したソリストが派手なパフォーマンスで、オーケストラと競演するのです。しかし、このコンチェルトは、演奏技術をあまり必要にしない最も地味な楽器をソリストとして、オーケストラと競演するのです。これが新しい。そして、このワークショップに参加している参加者の何人かが、恥ずかしがりながらも、協奏曲のソリストを経験して、楽しかったとコメントしました。こういう形で、脚光を浴びる場をつくれること、それが機能したことが、画期的だと思いました。

オーケストラの発想だけでは生まれない作品が、ハローライフの発想と融合することで生まれました。ハローライフでは、例えば、ゴミ拾いの活動をしているらしい。町のゴミ拾いをすると、お互いに視線を合わせずに会話ができるのだそうです。会話が苦手だったりしても、ゴミ拾いに参加することで会話ができるようになる。なるほど、と思います。では、ゴミ拾いの発想で合奏すると、どんな音楽ができるのでしょう?まだまだ、いろいろなことができそうです。

このオーケストラ×ハローワークのプロジェクトを「The Work」というプロジェクト名で呼ぶことになっています。今回は、The Workの第1弾で6回のワークショップを経て、7月にコンサートをする予定です。このThe Workの第1弾の名前を、考えたいと思っています。