野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

別府の町を、BEPPU PROJECTの小山さんの案内で歩く。京都在住で別府出身のフォトグラファー草本さんも合流して、元ストリップ劇場だった永久劇場や、P3の別府スタジオを見学したり、細い路地を歩いたりする。山と海にはさまれた温泉の町。家々が所狭しと立ち並び、アーケードの商店街に昔ながらの古いお店、新しいおしゃれなお店、シャッターが閉まったお店、空き地が混在する。

午後は、商店街の中にあるPlatform01にて、音楽ワークショップ「ゼロからの音楽づくり」開催。20名以上の参加があり、小さな子どもから95歳まで年齢も幅広く参加。皆さんに持ち寄っていただいた楽器(バスクラリネット、鼻笛、タンバリン、カスタネット、鍵盤ハーモニカ、鉄琴、竹、など)を、まず勝手に鳴らしていただくと、それだけで結構豊かな響きで面白い。商店街を歩いている人々の姿がガラス越しに見えて、音楽と不思議とマッチする。せっかくなので、全員で通りに向かって即興演奏してみようと思い提案。こうして演奏しているだけで楽しいのだが、参加費500円も徴収してのユケムリ大学、福岡から2時間半かけて来てくれている方もおられたので、作曲をしてみることにした。ゼロからの作曲。

まずは、その場で鳴っているものに耳を傾けると、子どもがデタラメに鍵盤ハーモニカを吹き鳴らすのが、かっこいい。それをみんなで真似してやってみる。でも、覚えられない。すると、別の子どもが、窓に貼ればいい、と言う。それは名案と、ガラスにマスキングテープを使って、図形楽譜らしきものを書く。続いて、太鼓の側面をコロコロと鳴らす音が面白い。これも、ガラスにテープで図形楽譜にしてみよう。楽譜の仕方も、ぼくが考えるのではなく、参加者の皆さんに考えてもらう。そうしていくうちに、窓ガラスに、ノーテーションができあがっていく。それは絵画のようでもあり楽譜であり、通行人とのコミュニケーションも面白い。「マスキングテープ」というタイトルの曲になった(Notations 21のTheresaにこの譜面、写真にとって送ってあげたい)。休憩後には、大正7年生まれの方も参加して「せーの」と「1234」で共演して、最後に「マスキングテープ」をアレンジして、ぼくが外を歩きながら指揮をした。たった1泊2日の別府滞在だったが、濃厚な2日間。

Notations 21

Notations 21