野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

魑魅魍魎とクレイジーなアーティストの話

「アートという戦場」という本に、原稿を書いたことがあります。この原稿自体、力を入れて書いたものなので、愛着があるものなので、多くの方々に読んでいただきたいものなのですが、原稿の題材となった「だいんだいん」というガムラン作品のDVDを見直して、ワークショップで作った発表会とは思えない強烈さやテンションや斬新さに、自分の作品ながら驚いておりました。そして、8年前の野村誠という人物を冷静に客観視して思ったのは、この人物クレイジーだなぁ、とてもじゃないが理解を超えているし、分かりやすい作品じゃないし、でも、一貫した強い世界観があって、これは一体何だろう、そこに惹かれるな、ということでした。本当に、アーティストというのは、理解を超えたことをします。

こういう危険なアーティストが、伸び伸びと実験ができる環境があって、そこに多くの人々が関わって、それをシェアできる環境があったこと自体が、驚きです。

わけの分からないものに、どんどんお金が出なくなっていきます。それは、わけの分からないものの力を信じる人が減っていたり、また、その力を信じて周りを説得してしまう人が減ったり、しています。神様や、魑魅魍魎や、妖怪や、悪魔や、物の怪なんかがいなくなって、祭りがパーティーになっていく。そうこうしていくうちに、世界からわけの分からないものがなくなって、理解できる物ばかりになってしまう。世界は安心で安全という名のもとの管理で、スリルと刺激のないものになっていく。

それに抗い、説明を超越した作品を作っていける強さを持つこと。そのために、魑魅魍魎と対話をしよう。