野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

写真がダンスになり、ダンスがダンゴになり、ダンゴがオペラになっていく

2月18日、19日の横浜での「復興ダンゴ」公演に向けて、準備中です。いよいよ、本日、予告編映像が完成しました。この予告編映像、宣伝のことを考えると、公演10日前に完成というのは、遅いです。でも、大切な言葉が色々詰まっていて、要素も多く、何を伝えていくか、本当に編集作業でも悩み苦しんだ上で、やっと予告編ができたのだと思うのです。そう思った時、形式だけ整えた予告編を期日に間に合わせて作るのではない、それ以上のメッセージがしっかり詰まった予告編ができたなぁ、と嬉しく思っております。まずは、皆様、この予告編を是非、ご覧下さい。

さて、本番に向けて、日々、作業を続けております。その中で非常に重要なのが、語り合うという作業です。公演が近づいてくると、作品の細部を確認したり、練習や構成などの話がどうしても増えます。しかし、東日本大震災を経て、原発事故を経て、これから、ぼくたちはどうやって生きていこうと思っているのか?そのことをどこまで作品にできているのか?そして、ぼくらはどうして生きていて、どうしてアートをしているのだろう?何に疑問を抱き、何に可能性を見出し、何に未来を見るのだろう?そういう話を続けております。直接会える人とは直接会って、会えない人とは電話で、話し続けております。

そして、写真の杉本文さんとも、何度も話し合いました。現時点で選ばれている写真が既に素晴らしく、それにピアノを演奏するだけで、十分なコラボレーションだと思うクオリティがあるのです。それなのに、ぼくたちは、危険な方向に、足を踏み出すべく、もう一度、全部の写真を見直す、という作業を、本番の10日前にやることにしました。そして、全部の写真をダンサーの砂連尾理さんに委ねて、写真をダンスとして選んでもらうことにしたのです。本番直前に、作品をかためて練習していく時期に、振り出しに戻すような提案を、杉本さんも砂連尾さんも受け入れてくれて、そして、今日、写真の中にある老人達の身体から、砂連尾さんがメッセージを読み解く作業が行われました。

この作業をやって、成功するという確証は全然ないのですが、直感でこれをやらねば、と思ったので、これで全然うまくいかなかったら、杉本さんにも砂連尾さんにも顔向けできない、本当にどうしようというリスクの大きい決断だったのですが、そこから砂連尾さん曰く(写真から)「渾身の振付」が生まれたのです。

その時、ぼくに2種類の「三色団子」が見えました。



異なった味が隣接しながら、お互いの味を引き出し、打ち消し合わないように共存する。このダンゴをつなげている串こそが、コーディネーターの吉野さつきさんの役割で、串がなければ、バラバラになってしまう。だから、本日の京都でのリハーサルに、砂連尾さんが来るとすぐに、東京の杉本さんに電話をし、砂連尾さんが写真を選定した段階でも電話をし、さらに、写真の投影する順番を決める時点でも電話をしました。砂連尾さんが選んだ写真は、写真家としては決して選ばない写真なのだそうです。でも、それらの写真が一連の振付として提示された時に、写真家も振付家も、共に達成感を感じ、何かを共有し、コラボレートした感覚に辿り着いていました。写真がダンスになり、ダンスがダンゴになり、ダンゴがオペラになっていったのです。

いよいよ、公演まで、10日間。18日の公演は前売り完売で、当日券も数枚程度しか発券されない可能性が高いです。19日の公演も、前売り券が完売する可能性が高いです。もし、来られる予定をされている場合は、お早めにお求め下さい。また、万一、予約を入れたが行けなくなった場合は、その分でご覧いただけるお客様が増えますので、必ずご一報下さいね。よろしくお願いします。

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