野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

作品は成長する〜ポスト・ワークショップとしての「福岡市美術館」

ついに、ダンス作品「福岡市美術館・REMIX」を上演しました。素晴らしいダンス作品が生まれたことに感激です。遠田誠と高須賀千江子のそれぞれの個性が良い形で際立ったように思います。そして、福岡市美術館で生まれた音楽が福岡市美術館に帰ってきたことにも、嬉しいです。ここまでの経緯を、もう一度、回顧してみたいです。

そもそも、福岡市美術館で、美術作品を楽譜として解釈して、音楽を作るワークショップをしたのが、昨年の8月。ワークショップだけならば、この3日間で完結しているわけです。30人の人が参加して、21の曲ができた。これだけで、大成功のワークショップで、参加者の方々も喜んでくれたし、美術館で音楽ワークショップを行いつつ、それが美術鑑賞にもなっている、という場が作れただけでも、十分な成果だった、と思うのです。

しかし、ぼくは、その先をやりたくって、それを、「ポスト・ワークショップ」と呼んでいるのですが、このワークショップで生まれた21曲を原作として、新たに作曲をして、野村誠作曲「ピアノのための21の小品『福岡市美術館』」が生まれました。この楽譜を、美術館で約1ヶ月に渡り無料配布をし、ワークショップに参加しなかった展覧会のお客さんが、何百部もの楽譜を持ち帰りました。

さらに、北九州、イタリア、横浜などでも、21曲からの抜粋で演奏したりもしました。加藤千晴さんも、自身のリサイタルで上演したりもしたようです。そして、ぼく自身も、昨年11月に、アジビホールで、全曲演奏のコンサートを行いました。

イタリアで「泰西風俗図屏風」を演奏したコンサートは、こちら。動画の最後にあります。


ワークショップから、音楽作品が生まれ、楽譜化されるだけでも、随分な成長だと思うのですが、そこから、さらに先に進んで、この21曲で踊るダンス作品を、遠田誠+高須賀千江子に委嘱しました。そして、21曲は、曲順を変えて、ピアノのための21のダンス「福岡市美術館・REMIX」となり、本日が世界初演だったわけです。

ワークショップで生まれた音楽が成長を続けて、ついに、ダンス作品になったわけです。この後、この作品は、さらに、どう成長をしていくことができるのでしょう?それが、次の課題です。