野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

あとは、野村誠を×(かける)

野村誠×北斎」の5回目。11月に2回のトークセッション、12月にもトークセッション、1月にワークショップをやって、今日ワークショップをやったら、次は、来月にコンサートで、完結します。今日の次は最終回なので、そろそろ追い込みです。

本日は、北斎の四重奏を実際に体験してみるべく、演奏家の4人の方(箏:竹澤悦子、尺八:元永拓、胡弓:尾引浩志、木琴:片岡祐介)にお集りいただいて、ワークショップの参加者から出た様々なアイディアを実際に試演してみました。

1 「巣ごもり地」という江戸時代にもあったオスティナートにのせて
2 木琴の音に合わせたユニゾン
3 木琴と箏でリズムユニゾンでやって、胡弓が鳥、尺八が風のつもりで
4 おどろおどろ系
5 木琴と箏は真面目に演奏。後から不真面目な虚無僧が加わり不穏な雰囲気に。町民がきて笑いながら胡弓をやると、みんながおかしくなる
6 尺八が瞑想していて、木琴と胡弓が自由奔放にやると、箏はどうしていいか悩む
7 胡弓と尺八が遊び人で民謡を歌っている。箏と木琴は伴奏に雇われている
8 木琴の合図で音を出す木琴コンチェルト
9 三味線を入れずにマイナー楽器でバンドやろうと集まった。胡弓がリズムを刻む

いやぁ、どれも本当に面白かったし、音楽も随分変わりました。

で、ワークショップの最後に、3月22日のコンサートに向けて、参加者の皆さんからのご意見をいただいている時に、竹澤さんが、



「で、これは、まだ野村誠が入っていないから、このままじゃあ『野村誠×北斎』にならないし、あとは、野村誠を×(かけれ)ばいい」


と言いました。

この言葉で、5回に渡って行われた北斎の四重奏に関するリサーチが終幕になったわけです。これまでは、ずっと主役に北斎の絵があって、北斎の絵を中心に動いていました。でも、これからは、野村誠の創作が始まるわけで、北斎の絵はきっかけで大きなインスピレーションであることには変わりないのですが、作曲するのは野村誠です。北斎や江戸に必要以上に縛られずに、ぼくの世界を作ればいいのだ、ということを、再確認させてもらいました。

と、なんで、こんなことを書いたか、と言うと、

1 昨日までは、北斎の絵の謎を解明することに、興味がいっぱいで、そのことが楽しくて仕方がなかったのですが、今は、曲を作りたい、という気持ちでいっぱいである、ということ。
2 曲を作るときには、そのインスピレーションは北斎の絵でもあるのだけど、それよりも北斎の絵をきっかけに集まった4人の素晴らしい音楽家のための音楽が書きたい気持ちでいっぱいだ、ということ。

につきます。やはり、竹澤悦子、元永拓、尾引浩志片岡祐介の4人の魅力が最大限に出る音楽を書くのが、野村誠だと思うのです。

ということで、新作をお楽しみに。