野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

レコーディング

調律師の上野泰永さんに誘われて、FORUM246にあるピアノを弾いて、レコーディングをした。ホールにあるピアノは、YAMAHAで、これはホールで録音。もう一台は、Steinwayの1927年製の自動ピアノ。こちらは、カフェ空間に展示として置いてあるものなので、深夜12時からレコーディング。

同じ調律師が調律したピアノでも、2台のピアノの味わいが全然違い、ピアノが違うと、こちらが即興で弾きたくなる音楽も全然違ってくることを、あらためて自覚させられた。1927年製のピアノは、鍵盤も現代のピアノに比べると浅いし、黒鍵の長さも短い。

そう考えた時、もっと色んなピアノで即興演奏を録音してみたい、と思うようになった。また、古楽器で即興演奏をしてみたい、と初めて積極的に思った。大井浩明君は、現代音楽を弾くピアノのスペシャリストであると同時に、近年はチェンバロクラヴィコードフォルテピアノなどを演奏している。こうした古楽器でバッハやベートーヴェンなど、当時の楽曲を演奏すると同時に、彼は現代の作曲家に新作を委嘱している。どうして、ぼくはこうした古楽器で即興演奏をレコーディングするということを、今まで真剣に考えなかったのだろう?と思った。ぼくの即興演奏は、自分のスタイルを楽器にあてはめるのではなく、楽器や環境に自分を順応させながら演奏するスタイルであるから、現代のピアノで即興演奏するのと、フォルテピアノで即興演奏するのでは、違った音楽が生まれるはずだ。そうやって、違った鍵盤楽器を演奏していくことで、ピアノ音楽について見えてくることがあるかもしれない、と思った時、ぼくは、古楽器の演奏を、古楽器とは全く違ったスタイルで、やってみたい、と思った。

そうしたことに気づくきっかけを得た夜だった。