野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

さくら苑

横浜の老人ホーム、さくら苑。「お年寄りとの共同作曲」に取り組んだ1999年から、通い続けて10年が経過している。本日は、映像の上田謙太郎さんも初めて来てくれた。あと、「地域創造」のアウトリーチ事業調査か何かをしているらしいニッセイ基礎研の方々も取材にやってきて、ぼくらの活動が終わった後に、桜井苑長にもインタビューをしていました。

6歳の時に大正琴を習ったことがあり、80何年ぶりに大正琴を弾いた八木さんが、何かを思い出そうとして演奏する大正琴の音が、とても叙情的に響き、みながそれに聴き入る。89歳の八木さんのご主人が、何かを言い、八木(夫)さんがボタンを押さえ、八木(妻)がピックで弦を弾くという夫婦の2人3脚的な演奏が、独特な間合いで進む。ぼくは、そこに大正琴で加わる。かなり美しい。

前回もパーカッションを頑張った樋上さんにドラムをやってもらおうと太鼓をいっぱい並べる。ぼくはピアノでアンサンブルをしようかと思ったが、樋上さんから三味線をやって欲しいとリクエストがあり、三味線に。すると、「わいわい音頭」を歌いながら、太鼓を叩き始める樋上さん。なるほど、それで三味線か。気合いのこもった太鼓に、こちらも勢い良く三味線を弾きました。

その後も色々ありまして、最後に、本日の映像を見る。この映像を見るという活動は、なかなか面白い。Keyboard Choreography Collectionでも、「べルハモまつり」を作曲したASIASのワークショップでも、最近は、映像を何度も見返すということを、何度もしています。野球選手なんかもビデオとかでフォームのチェックしたり、相手投手の癖を研究したりするらしいですが、音楽家にとってもビデオを見るというのは、可能性がいろいろある。即興的にその場で起こったことを、ビデオで何度も見て、そこから何かが生まれてくる。音楽療法家は、ビデオを見て、セラピーの検証をするし、イタリアのレッジョ・エミリアの幼児教育とかでは、ビデオを見て、子どもごとの関心を探り、その子に合った教育プログラムを組み立てたりするらしい。ぼくは、音楽家として、ビデオの中に眠っている創造の種から、何かが生まれてくることに興味がある。

次回は、最初の一時間くらいは、適当に色々やってみる。その後は、その日の面白かったところをピックアップして、撮影。最後に映像を見る、という3部構成で進めようということになった。