野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

15−16世紀のイタリア音楽を想像する

イタリアのミラノ滞在。明日が公演だが、今日は劇場入りできないので、オフ。ミラノの美術館/博物館をまわる。

 

その中で圧倒的に面白かったのが、ブレラ美術館。38の展示室に、主に膨大な数のイタリアのルネッサンス絵画が並び続ける。その質の高さと量に圧倒される。せっかくなので、それらの中で描かれている楽器に、特に注目した。だいたい、楽器を演奏している人々は、宗教画の中心にはいなくて、マリアなどの足元などで、楽器を奏でていたりする。

 

面白かった絵のその1が、打楽器に響き線。リュート、トライアングル、ボンゴのような太鼓、タンバリンのような太鼓、大きめの筒型太鼓が描かれている。それらの全ての打楽器の皮に、線が引かれていて、これらは響き線ではないか、と思ったこと。

 

面白かった絵のその2は、ヴァイオリンのような弦楽器だが、弦が5本あって、さらに、指板に接しない形でのオープン弦がある不思議な弦楽器が描かれていた。ビオラ・ダ・ガンバが出てくる以前のフィドルについて、あまり知らないが、ドローンを演奏するオープン弦があったとするならば、そういう音楽の仕方をしたと想像した。

 

面白かった絵のその3は、やはり、絵の下のかすかなところで、8人の天使が8種類の楽器を演奏していて、だいたい、何の楽器かわかるのだが、一個だけパイプオルガンのパイプのような物を持っている天使がいた。あれは、楽器なのだろうか?

 

その後、楽器博物館に行った。そこで、これらの絵画と対応するものがあるか、チェックしたところ、20世紀のペルーの皮太鼓があって、絵に描かれていたような響き線が張られていた。20世紀のペルーの楽器が、どうして16世紀のイタリアの絵画に描かれるのだろう?

 

オープン弦のあるフィドルはなかったのだが、citaraと呼ばれる撥弦楽器が数多くあって、その多くが、オープン弦があって、天使の弾いていた擦弦楽器によく似ていた。

 

そして、パイプの謎の楽器は、全く見当たらなかった。

 

それにしても、楽器博物館にくると、モダンピアノではなく、古楽器の様々なピアノや、ピアノ以前の鍵盤楽器を目にする。そして、それらの鍵盤楽器を実際に弾いてみたい気持ちになる。それらの楽器を触り、かつてあった音楽を想像することで、未だ存在しない鍵盤音楽の可能性を見出せる気がするので、機会をつくって、フォルテピアノや、クラビコードなどを演奏する機会をつくっていきたい、と改めて思った。

 

ダリオ・モレッティと再会。明日は、いよいよ朝から仕込み、リハーサルを経て、午後には2回本番。