野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

追求→ついQ→いつQ

碧水ホールでのガムランで作曲するワークショップの4日目。

碧水ホールでのこのワークショップは、5年目です。今までワークショップで作った作品は、片岡祐介さん、柏木陽さん、林加奈さんなど、ゲストアーティスト+ワークショップ参加者で上演してきました。だから、曲が展開する合図(cue)は、ゲストアーティストが出していました。

で、昨年まで続いた「野村誠の世界」というコンサートは、昨年で打ち切りになったので、今年は色々なゲストをお招きする予算もないので、野村誠ワークショップに林加奈さんがアシスタントで入っている、というシンプルな形で進んでいます。そして、本番には、野村も林も出演せずに、ワークショップ参加者だけで上演することにしています。

それで、今日は、色んなきっかけ(cue)を誰が出すかを各自に選択してもらいました。普通、こういうきっかけを出す人は、バンドリーダーとか指揮者とか一人だけなんですが、このグループには、そういう明確な中心はありません。そして、全員が一人一つずつ、きっかけを出すのです。指揮者(リーダー)が、常に変わっていくわけです。

林加奈ちゃんのような存在感もあり声も大きい人が、出演しないで傍観者に回った途端に、それまでは存在感を隠し気味にしていた面々が、色んな個性を見せ始めます。今日は、全員の自己紹介をし、全員の合図を決めて、それで、曲が展開するか、ということを、やりました。そして、曲を構成しました。

そして、最後にタイトルを相談しました。歌詞のある歌は、「うたの追求」なので、「追求」が一つのキーワードになりました。また、イベントのタイトル「ワンデイ・ガムラン・ピクニック」の頭文字をとった「わがP」という言葉が生まれました。「わがP」から「追求」が「ついQ」になりました。そして、「ついQ」が変形して、「いつQ」というタイトルに決まりました。

決まってからしばらくして、これは、全員が一つの合図(cue)を持っているという意味で、いつ(=1)Q(=キュー=cue)ともとれるし、いつ(=何時)キューが出るか分からないという意味にもとれる、ということが分かり、今回の作品では、キュー(合図)が重要だということを、確認しました。

ということで、次回は、9月15日にリハーサルで、いよいよ16日に「いつQ」を世界初演します。曲は15分程度の長さになっています。

03年が、しょうぎ作曲をベースに作った演劇的な要素もある「スケ子っ!!!」(今考えると、かなり古典的な作品)
04年には、ホエールトーン・オペラのやり方を踏まえ、様々ななんちゃってワークショップを経て作曲。子どもたちがワークショップに参加していないようで参加していた「だいんだいん」
05年は、ガムランが、お手玉、キャスター、テーブルなどと合体した「さるう」(映像ドキュメントを撮影することを前提に、絵的に面白いパフォーマンスを増やした)
06年は、楽器をバラバラに解体して、一直線に並べた「青ダルマどん」

という4年にやったことが血肉になっている感じで、今年初めて参加する人も含めて、ガムランでの非伝統的な音楽(パフォーマンス)を、皆さんが自然体でやっています。続けることは、本当に力になりますねぇ。