野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

手書きの路上日記

昨日の日記に出てくる市川さんの出てくるページを探して、路上日記のオリジナルを読む。(ペヨトル工房から出版されている日記は、抜粋)

すると、ありました。1996年11月6日。阿佐ヶ谷での路上。キャロサンプの野田茂則さんと会った後。一人での路上。この路上で、作曲家の高野真理さんとも出会っている。

市川さんについては、「ジェンカ」が気に入った人。UFO,サザエさんも聞いてもらう。「親指がすごいですね」とのこと。案内すること。

と書いてあり、11月22日のBIG MAMAに来たと書いてある。

11月22日のBIG MAMAは、BIG MAMAでの2度目のライブだそうで、本当に初期。河合拓始さんと小瀬泉さんと3人でやっている。阿佐ヶ谷の路上で会った市川貴弘さんがガールフレンドと一緒に見に来た。BIG MAMAの近くの調理師専門学校でべんきょうしているそうだ。

とあった。

1998年4月15日の路上日記。この時は、林加奈ちゃんと小瀬泉さんと3人で大井町駅東口。日記を読みすすめると、市川さんの名前があった。

そこに、若いスーツを着た男性があらわれ、声をかけてくる。何と、昔々、阿佐ヶ谷路上で会った市川貴弘さんだった。
 「この4月に大井町に引っ越してきたんです。」
品川のホテルで、中華料理のコックさんをしているそうだ(従業員60人!)。
 「最近こっちになって、なかなかBIG MAMAが行けないな、と思っていたら、こんなところで会えるなんて。うれしいな。先日、BIG MAMAに電話したら、最近は第4金曜日にやってるそうですね。」
こうやって出会えるとうれしい。
 「こっちは、うちの女房です。」
なんと、若いのに奥さんがいるとは!僕らは「結婚行進曲」で祝福する。
市川さんの奥さんが持っているポップコーンをつまませてもらう。
 「どうしたんですか、ポップコーン」
 「彼女、ディズニーランドで働いていて、今日が15周年ってことで、今ディズニーランドでいろいろしてるんですん。」
 「じゃあ、ディズニーにちなんだ曲」
ミッキーマウスマーチを演奏する。そこに、おじさんが険しい表情でやってきて、
 「おれでも知っているような曲をやれ。」
というので、
 「今は彼女のリクエストで・・・。」
と言うと、突然態度が豹変して、腰を引いて3メートルくらい後ずさりして、
 「スミマセン。そうとは知らず・・・」
と丁寧に謝る。
 「津軽海峡冬景色」をやっていると、
 「だめだ、もっと哀愁をただよわせないと・・・。」
と言う。そこで、他の演歌をやっていると(「天城越え」、「娘よ」をリクエストされるができない)突然、市川さんの奥さんに2000円渡して、一目散に去って行った。何て意表をついた人なんだろう。

路上演奏が終わったら、まず、全部手書きで日記を書いていたのです。いきなり、パソコンに入力するのではなく、必ず手書きのエネルギーで書きたかったのです。今見ても、当時の筆跡から、なんとなく臨場感が伝わってきて、思わず、懐かしくなったのでした。