野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

アートと福祉

エイブルアートは、アートか福祉か、という議論がある、とのことです。ぼくは、エイブルアート・オンステージに実行委員として関わっていますが、こういう疑問を抱くことはありませんでした。

単純に、「エイブルアート」という名前ですからアートプロジェクトだと思いましたし、委員を引き受けました。もし、「エイブル福祉」という名前のプロジェクトだったら、音楽家のぼくに依頼もなかったと思います。実際、エイブルアート・オンステージの実行委員は、アーティストやアート関係者などアートの専門家で構成されていて、福祉の専門家は一人も入っていません。だから、福祉プロジェクトだという発想は、全く思いつきませんでした。

「アートか福祉か」という議論が起こるということは、作品が面白くなかったのかもしれません。作品自体が圧倒的な面白さや美しさや気持ち悪さなど、独自の世界観を提示していたら、その作品自体について論じたくなるはずです。「アートか福祉か」などという抽象論にはならないでしょう。だから、もっと作品が面白くならなければいけないし、作品について批評をしていかなければならない、と思います。

エイブルアート・オンステージは、新しいアートプロジェクトの立ち上げを、支援します。より明確に言えば、「障害がある・ない、プロ・アマチュア」などといった枠組みを無効にする交流・交換・創作の場としてのワークショップを新たに立ち上げ、そのワークショップを通じて創作したパフォーミング・アーツの公演、を支援します。

新しいプロジェクトの立ち上げなので、これまでの実績は問わず、とにかくできるだけユニークなプロジェクト、これまではなかった先駆的なプロジェクトを選んで支援したいのですが、なかなかそういう応募が少ないのが現状です。だから、「アートか福祉か」という議論が起こってしまうのでしょう。

1年目のシンポジウムに高嶺格君を呼んだのです!高嶺くんにも実行委員に入ってもらった方がいいかもしれないなぁ。