野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

エイブルアート・オンステージ第3期報告会

今日はエイブルアート・オンステージ第3期の報告会で、ぼくは実行委員として、それぞれの報告を聞いてコメントをする役割で行きました。

自分がコメントしたことの覚書。

・「普通」という言葉が何度も出てきたのが、すごく気になった。「普通」って何だろう?
・舞台にのせるということは、ぼろくそに言われる覚悟を持つこと。舞台にのせない限り、誰からも賛同も得られないし、ぼろくそにも言われない。ぼろくそに言われる場を持つことは、出発点になる。
・初演の前に試演をして、ぼろくそ言ってくれるような信頼できる人をよんで、一度見てもらうのもありかも。
・ソロダンス公演の中に、プロのダンサーのソロを並列に並べたプログラムを見てみたかった。そうすることで、ソロダンスの困難さ、可能性、いろんなことが多角的に見えてきた気がする。
・ツッコミのワークショップを続けているような感じ。つっこんでくれる人がいるから、救われる。無視されることほど、さびしいことはない。
・観客一人ひとりが、違った特徴やバックグラウンドを持って鑑賞することは、大前提。その上で、違った人が違った立場で存在できる場をどう作るのか。観客参加型の劇をする場合の難しさ。


6団体の報告、各団体20分でやりました。昨年、一昨年は8団体で15分だったのですが、今年は6団体だから20分にのばしたみたいです。20分になったら、内容が充実するかというと、どうもそうではないみたいです。15分の方がかえって内容が凝縮されていたような気がしたので、発表は短くして、その代わりディスカッションの時間を長くとった方がいいように思いました。

あと、これは、エイブルアート・オンステージの報告会です。エイブルアート・オンステージは(ワークショップで作る)舞台公演に支援するプロジェクトです。ですから、報告のメインは、舞台公演であるべきです。だから、もっと、公演の本番の映像から抜粋で、じっくり見せて欲しかったです。例えば、宮崎での和田さんの演技はすごく良かったのですが、「和田君の演技がよい」と何度言葉で説明しても、和田さんの演技の良さはなかなか伝わらない。それよりも、彼の演技の映像を3分でも、みんなで集中して見た方が、断然情報量が多いと思うのです。

それぞれのプロジェクトが何をしたか、については、しっかり報告がされていました。そういう意味では報告会として成立していたのです。でも、それぞれのプロジェクトにどんな魅力があったのか、それぞれの公演にどんな魅力があったのか、についてが、メインテーマだと思います。

2002年にASIASのフォーラムを行った時、あれはアーティストが小学校でやったワークショップの報告だったのですが、プレゼンされる映像とか内容が、どれも面白かったのです。映像そのものが作品と呼べるもので、途中で会場にいる小学校の先生から「プロセスこそが重要なのに、成果物ばかり見せられても分からない」という意見が出て、会場が賛否両論に2分され、喧々諤々。すごく面白かった。アンケートも2分されました。でも、それがアートだと思う。

エイブルアート・オンステージは、かなり突っ込んだ取り組みもあるのに、昨日のような報告会をやっている限り、その魅力は伝わらず、福祉的な善意で行われている活動なのだろうとレッテルを貼られて終わってしまう危険性があると思います。実際はそうではないし、かなり際どいところで模索しているので、それをもっと自覚して、意識して、アウトプットしていかないといけないでしょう。ぼくも実行委員として関わっているので、いろいろ発言していこうと思います。