野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

西巣鴨にテーブルマーチが鳴り響く

今日は、にしすがも創造舎(=旧朝日中学校)で、NPO法人芸術家と子どもたち」主催の親子ワークショップ。ぼくは、このNPOの理事をしています。このNPOでは、学校にアーティストを派遣して行うワークショップ型の授業(エイジアス)と、地域とアーティストが関わるプロジェクト(Action!)の二つの活動を主軸に行っていて、「あいのて」に出演している片岡祐介さんも、尾引浩志さんも、エイジアスの授業をしたことがあります。そこで、今回は、「あいのて」に出演する3人のミュージシャンによる親子向け音楽ワークショップを、Action!としてやってみよう、ということになりました。
http://members.at.infoseek.co.jp/ASIAS/

ちなみに、「ワニバレエ」はエイジアスのプロジェクトとして行った平盛小学校で、1年生とのワークショップで生まれた歌です。だから、「ワニバレエ」の著作権収入は、全額「芸術家と子どもたち」での子どものためのプロジェクトに費やそう、と考えています。だから、「ワニバレエ」が爆発的にヒットしたら、日本の子どもたちが、面白い芸術家と生で出会うチャンスがいっぱい増えます。

今日は、片岡祐介さんと二人で「あいのて」を題材とした子ども向けワークショップをやりました。宣伝は短期間だったのですが、定員10組のところを定員を大きく超えた15組ほどの親子が参加。3歳から7歳くらいの子ども20人ほどと親が15人ほど、そこにボランティアのスタッフなどが加わって、教室は所狭しという感じでした。

で、今日は本来なら「テーブル」が放送される予定の日だったので、番組を見て直後に、番組の内容を起点にさらに発展できるように準備もしてもらっていました。ところが、テーブルの回が放送中止になってしまったため、テーブルではなくピンポンのことをすることになったわけです。

40人ほどが集まった部屋で、ピンポン球の繊細な音を聴くのは難しいので、途中で5人ずつ別室に行って、交代でピンポンの音は楽しみました。この別室でのセッションでは、一人ひとりが相当独自な奏法を編み出してくれて、収録の前にこれ知ってたら、番組に採用したかったなぁ、と思いました。

ワークショップは11時から12時の1時間の予定だったのですが、開始30分前から、みんなドンチャカ自由に音を出して遊んでいましたし、その後さらに休憩も入れずに1時間半やりました。12時半だし、みんなもお腹もすいたかな、そろそろ終りにしようと、一応終わりにしました。「でも、まだこの場所はあいてますから、ここで遊んでいてもいいですよ。」と言いました。みんなもう十分と帰っていくかな、と思いましたが、帰らずに残って遊んでいます。そして、一人の子どもが、放送中止になった「テーブルマーチ」のリズムを叩き始めたのです。

ぼくは一緒に叩き始めました。すると、次第に他の子どもも寄って来て机を叩きます。別の子どもが机の上に、色んなものを置いて響かせます。ぼくは鍵盤ハーモニカでテーブルマーチのメロディーを吹き始めます。誰が指示するわけでもないのに、自然発生的に曲の演奏が始まり、きめの合図もみんなでそろっていきます。そして、1分くらいの曲はループし続け、少なくとも15分、ひょっとすると20分以上、エンドレスで演奏しました。どんどん演奏にはグルーブが増してきます。子どもたちの机の叩き方が、時間が経てば経つほど、優れたパーカッショニストが脱力して太鼓を叩いているような手つきに変わっていきます。これは、驚きの時間でした。10年前に池袋の路上で初めて「サザエさん」をエンドレスに演奏した時に、通行人の人が次々に踊り出した時のエンドレス感に近いものがありました。

もちろん、子どもたちは放送中止になったことも何も知らないで、ただ、好きだから、やりたいからやっていたのです。でも、子どもたちがまるで、ぼくを勇気づけようとしているようなら、ぼくのやっていることを応援してくれているような感覚を、持ちました。たった1回の放送を見ただけで、こんなに印象に残っていて、しかも、それを散々音楽ワークショップし続けて、休憩も全然なかったのに、その後に、こんなに長時間飽きずに叩くんですよ。ありがとうです。元気をいっぱいもらいました。

終った後、色々話しているうちに、エイジアスの授業として、「あいのて」の番組に生かせそうなアイディアを小学生と一緒に考える授業っていうのもあるのでは、と思いました。例えば、小学5年生と一緒に、「あいのて」でどんな音遊びができるかを考え、それをもって実際に幼稚園などに行って実践してみます。そして、その中でうまくいけば、本当に番組に反映されるものもあります。そして、実際に番組が放送された後に、小学生たちと、できあがった番組についてディスカッションをする、なんて案です。

「あいのて」は子ども向けの番組ですが、当然番組を作る会議に、子どもは一人も参加していません。でも、子ども向けの番組なのですから、子どもの声が反映されたらいい、と思うわけです。子どもはテレビを見る人、テレビ局は番組を作って提供する、という一方向の関係から、子どもたちも番組づくりに参加していく子ども番組のあり方、というものを、少しずつ探っていきたい。そのための第一歩が、今日だったように思いました。楽しみが、どんどん増えてきます!