野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

The Music of Alexander Scriabin/目をつぶる

James M. Baker『The Music of Alexander Scriabin』(Yale University Press)読了。全部で140を超える譜例があり、スクリャービンの和音分析や構造分析がしてある本で、とても勉強になった。調性音楽のトニックードミナントの構造を使いながら、神秘和音など全音音階的な増4度などを使って調性感を曖昧にするスクリャービンのハーモニーは、学生の頃は無調になりきれていない過渡期の音楽として、とりあえずスルーして、20世紀の無調の音楽ばかり勉強した。でも、今になると、こうした過渡期に試行錯誤しているところは、とても興味深く、分析するのが楽しく、自分自身の今後の創作の糧になる体験だった。

 

yalebooks.yale.edu

 

今日は目をつぶって琵琶を弾いてみることにした。琵琶法師の感覚に近づこうと思ったら、とりあえず、目で見ててはダメだなぁ、と思い。目をつぶると撥が絃のどの辺にどういう角度で当たっているのか分からないので、文字通り手探りで演奏することになる。これを続けていって、琵琶に慣れていきたいと思う。

 

今月中にやろうと思っている仕事が、高松市美術館の開館・閉館の音楽の作曲。さっさと着手しても良いのだけど、少し3月3日のコンサートの熱が冷めてから取り掛かろう。

 

2019年の「あいちトリエンナーレ」の名古屋市が負担金を払っていなかった件、最高裁が上告を棄却し、全額支払いが確定したとのこと。でも、このニュースを見ると、名古屋市は既に全額仮払いしているとのこと。妥当な判決と結末になって、よかったと思う。

www3.nhk.or.jp

 

Joseph Celliのエスカレーター・ミュージックの動画見て、面白そうだと思った。

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朝寝坊とちくわ/NHKの番組/瞽女の世界を旅する/琵琶の角度

今朝は、起きたら14時だった。よく寝たー。そう言えば、ぼくがよく寝ることについて、島袋道浩くんが書いてくれた文章がある。2003年のコンサート『音楽ノ未来 野村誠の世界』への寄稿文。今でもウェブで読める。良い文章なので、読み返すと励まされる。

 

www.jungle.or.jp

 

NHKのウェブサイトに、《ライオンの大ぞん》の中学生との練習〜本番の流れを追った7分ちょっとの番組が公開された。本番が終わった後の中学生たちのコメントなども聞けてよかったのと、本番の様子を見て(ぼくはピアノを弾いているので、中学生たちの様子は見えない)中学生がほとんど暗譜していて、あまり譜面を見ずに指揮をしっかり見て歌っていることが確認できた。覚えてしまうほど、熱心に取り組んでくれたのだ。

www.nhk.or.jp

 

大山眞人『瞽女の世界を旅する』(平凡社新書)読了。瞽女さんたちのエピソードが数多く書かれていて、瞽女さんたちの生活を体感できて、面白い。

www.heibonsha.co.jp

 

琵琶を演奏する時の撥の使う角度を探る。多分、楽器の角度がこうで、撥の角度はこうなのかなぁ、と少しだけ、腑に落ちる。楽しい。

 

ビートルズとシタールと琵琶/さっそく録音/中野裕介

いきなり朝寝坊。歯医者の予約11:30だったのに、起きたら11:00だったーー!大慌てで歯医者行ってきたーー。

 

高松遠征の直前に入手した琵琶。気分としては、初めてシタールを手にしたジョージ・ハリスンビートルズインド音楽の出会いのよう。琵琶を弾いているのにシタールを弾いているジョージ気分になる。インド音楽に触発されているビートルズ、やっぱりいいなぁ。

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高松市美術館のコンサートの音源のミックスを五島昭彦さんが、次々に送ってくださる。素晴らしい高音質で臨場感のある録音。加藤綾子さんとやった即興は、演奏中は夢中だったので改めて聞き返してみると、迷いや躊躇が全然なくて展開が非常にスムーズで、加藤さんの思い切りの良さを再認識。素晴らしい。臼杵さんと演奏した《石の意図=糸の意志》も音源だけで聴くと、なんとも言えない面白さがあり、臼杵さんが音色のバリエーションを探っているのが感じられる。

 

里村さんが、中野裕介さんの図録の編集作業をしていて、それが大詰めらしく、里村さん執筆のテキストも読ませてもらう。中野さんの2022年夏の不知火美術館での展示は、かなり複数の要素が絡み合っていたのだなぁ、と改めて、その複雑さや奥深さを知る。

 

 

栗林公園/ニュースやレポート/関西鍵盤ハーモニカオーケストラ

高松市美術館でのコンサートも終わり、せっかくなので、栗林公園に行く。とても広い庭園で、池もいくつもあり、特徴的な橋も数多くあり、松を初めとする木々もあり、園内をぶらぶらと散策していると、いつまででも歩き続けられ、今日のように天気の良い日は抜群に快適。

 

美術館で荷物をピックアップし、熊本に戻る。

 

NHKのニュースでも放送されたらしい。香川ではテレビで放送。NHK+の会員だと見られるらしいが、会員でないので見ていない。でも、コンサートに来ていないのにテレビを見て連絡をくれた方もいたので、きっと放送されたのだろう。

https://plus.nhk.jp/watch/st/370_g1_2024030442144?playlist_id=8c7bdd56-3f14-4e2f-a20a-bd511f81288b&t=569

 

加藤綾子さんが、コンサートの感想をさっそく文章にして書いてアップしてくださる。気持ちが伝わってくる良い文章であり、実際に現場で加藤さんが何を感じて、どう関わっていたかが書かれているのがいい。こうやって文章の形で残るのも、大変貴重だ。加藤さんに感謝。それにしても、ヴァイオリンを演奏し、即興もし、文章も書き、本当に多才な方である。

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松田昌さんのfacebookで紹介されていた関西鍵盤ハーモニカオーケストラによる芥川也寸志の演奏を聴く。この曲、25年前くらいに片岡祐介さんが編曲してきて、ケンハモ四重奏でやったことがあって、まさか他にやる人がいるとは思っていなかったので、びっくり!ケンハモの輪はどんどん広がっているんだなぁ。鍵盤ハーモニカ8重奏の《神戸のホケット》(1996)も、この人たちだったら良い演奏してくれそうだ。

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ほんじつは・あーりがとう・ございました

3月3日、耳の日高松市美術館35周年記念コンサート、生涯忘れられないコンサートとして、自分の記憶に残るものとなった。先着200名で事前申込不要だったので、何人来るか未知数だったが、開演30分前に既に長蛇の列ができて、座席を増席しても足りず立ち見も多数出る大盛況に!高松の文化度の高さを感じるとともに、これまでの高松市美術館の取り組みの成果があってこその超満員だとも思った。

 

プログラムは、

 

1 野村誠《鍵盤ハーモニカ・イントロダクション》(2013)

2 野村誠加藤綾子高松市美術館のための3つの即興曲》(2024)

3 野村誠《ライオンの大ぞん 村山籌子の童話よる合唱曲》(2023)

4 野村誠《石の意図=糸の意志》(2024)

5 野村誠《おむすび山の磬の祈り》(2024)

 

ぼくの中では、作曲家としての野村誠ピアニストとしての野村誠、即興演奏家としての野村誠、鍵盤ハーモニカ奏者としての野村誠、音の探求者としての野村誠、人と関わりながら音楽をつくる野村誠、場所と関わりながら音楽をつくる野村誠などは、矛盾なく共存している。その世界観/音楽観を5つのプログラムで提示することができ、大きな手応えを感じた(どんなコンサートだったかについて、詳細の感想レポートが佐々木裕健さんによりYouTubeにアップされているので、そちらを参照してください)。

 

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臼杵美智代さん(サヌカイト)は初共演だったし、加藤綾子さん(ヴァイオリン)も二度目の共演で作曲した曲を演奏してもらうのは初めてだったし、国分寺中学/山田中学の合唱部も当然初共演で、野村ワールドほぼ初体験のメンバーばかりでの演奏会だったにも関わらず、互いに精一杯理解し合おうとしたことで、一緒に作り深みに達することができて、このメンバーでやれて良かったなぁ。

 

ワークショップも事前申込不要だったが、50人近い人数が参加。サヌカイトを好き勝手に鳴らしてもらったり、簡単なルールで音を出したり、開館・閉館のアナウンス原稿を読んでいただいたりして、それを録音した(これを今月、ぼくが編集して、開館・閉館の音楽を作曲する予定)。これも、とても良い時間だった。

 

盛り沢山な3月3日。1年かけて少しずつ準備した企画が花開き達成感があると同時に、本日で終わってしまう寂しさも感じ、余韻に浸る。でも、楽譜を出版したいとか、再演したいとか、そういう声もあがっているので、終わったようで新たな始まりでもあるのだなぁ。

 

美術館の牧野さんはじめ全ての関係者のみなさん、

ほんじつは あーりがとう ございました

 

 

 

 

いよいよ最後のリハーサル

高松市美術館35周年記念『野村誠コンサート 音楽の未来を作曲する 〜サヌカイト・即興・村山籌子』も、いよいよ明日。

 

午前中は、国分寺中学校合唱部+山田中学校合唱部、加藤綾子さんとの合同リハーサルで、《ライオンの大ぞん》。ヴァイオリンが加わることで、村山籌子の世界がさらに広がるし、エントランスホールの石の残響が合唱の声に艶を与えてくれて、非常に良い。いくつかの修正ポイントをブラッシュアップしていき、大変良い演奏に仕上がった。録音の五島昭彦さんも到着。

 

後半はサヌカイトの臼杵美智代さんも加わり、《おむすび山の磬の祈り》の合唱部がサヌカイトや声で加わるところをリハーサル。エントランスホールの空間をうまく活かせて響きが作れてよかった。アンコールも練習。

 

午後は、《石の意図・糸の意志》を臼杵さんと試行錯誤。サヌカイトと箏の組み合わせは本当に面白い。臼杵さんも打楽器奏者らしく、音色や奏法を追求されてとても良い。

 

臼杵さん加藤さんと《おむすび山の磬の祈り》のトリオ部分もしっかりリハーサル。合奏はかなりいい感じ。あとは音量バランスの調整。サヌカイトは、硬い音色と柔らかい音色の音量の調整などが繊細で、その辺が課題。皆さん、おつかれさまでした。

 

鍵盤ハーモニカも個人練習。ワークショップの準備でサヌカイトを講堂の床に並べると、これだけでインスタレーションみたいで美しいし、音もかわいい。

 

美術館の企画展をクイック鑑賞。明治生まれの浮世絵版画家川瀬巴水の展覧会。浮世絵木版の色って、こんなにカラフルなんだなぁ、と思う。江戸時代の版画の色味が渋いと思っていたのは誤解で時代の経過で色味が落ちただけかも、と推測した。

 

だいたい山とか空とか橋とかが目立つ風景画で、人はあんまり出てこなくて、出てきても小さく少し。明治や大正時代でも、これくらい自然は大きく、人間は小さかったんだなぁ、と思う。十和田湖城崎温泉、熊本のえず湖、天草、長崎の眼鏡橋、京都の清水寺、鴨川など、自分が旅で訪れたことがあり認識できる景色がいっぱいあり、しかし、たった100年前でも風景は変わってしまうものだなぁ、と思わされる体験でもあった。

 

エントランスホールには、座席がぎっしり並べられて、明日の準備も万全。いよいよ明日が本番。

www.city.takamatsu.kagawa.jp

秋山邦晴さん「城の眼」/エントランスホールでのリハーサル/ノマド

ヴァイオリニストの加藤綾子さんと岡山で合流し、高松入り。高松市美術館牧野裕二さんのお迎えで美術館入りと軽く打ち合わせ。

 

せっかくなので、加藤さんと喫茶店「城の眼」を訪れ、秋山邦晴さんのことを尋ねてみると、秋山さんの直筆の詩や店でかけるBGMのリスト(これも直筆)を見せてくださる。

 

臼杵美智代さんがサヌカイトをセッティングされている間に、加藤さんと《ライオンの大ぞん》のリハーサル。エントランスホールにヴァイオリンの響きが抜群。即興演奏の立ち位置などもチェック。離れて演奏したり、2階と1階で演奏したりも、聞こえも良い。

 

臼杵さんと加藤さんと3人で野村の新曲《おむすび山の磬の祈り》のリハーサル。エントランスホールが響くので、最初はリズムをうまく合わせるのが難しかったが、徐々に耳が馴染んできて、どんどん良いアンサンブルになっていくし、お二人がニュアンスを工夫されると、演奏がオーガニックで相互作用がいっぱいで、どんどん面白くなっていく。いいトリオだ。

 

休憩の後、当日の本番の時間帯に照明も含めてチェックした。影もかっこいい。今日の最初では想像もつかないほど演奏も熟してきた。その後、サヌカイトの新奏法の新曲《石の意図・糸の意志》のセッティングも含めて試してみる。会場の空間を面白く使えた。

 

リハーサルと夕食後、加藤さんが以前演奏したことがある「ノマド」に連れて行ってくれる。開放的な気分で居心地の良いお店だった。最後に、演奏を促されたのでピアノとヴァイオリンで即興をしたら、テナーサックスやトイピアノなどで乱入してきてくれて、いきなりセッションに。ノリの良い人々だった。