野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「ウマとの音楽」から15年

アコーディオニストの大田智美さんが、野村誠作曲の「ウマとの音楽」(2005)を世界初演した14年前の動画をYouTubeで公開した。昔の映像で固定カメラの粗い映像なのだが、貴重な世界初演の動画。そして、演奏がめちゃくちゃいいので、ぜひ、聴いてみてください。

 

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今日は、一日中、作曲していた。山本亜美さんのための新曲を作曲中。名古屋で高校時代に出会いぼくの人生を大きば衝撃を与えた作曲家の戸島美喜夫先生への追悼の曲でもある。(戸島先生については、野村誠著「音楽の未来を作曲する」を参照してください。)音楽の未来を作曲する | 野村 誠 |本 | 通販 | Amazon

 

25弦の箏のために作曲するのは初めてで、調弦を決めないといけない。山本さんの演奏している動画を見ると、弦何本くらい離れていると片手で指が届いて同時に鳴らせるのかと思ってみる。基本、お箏と同じ感じ。戸島先生の作品が、美しい。

 

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今日は黙々と一日中、作曲作業。やってることは、音符を書いたり消したり調整したり。動画を見たり、考えたり、ピアノで響きを確認したり、そして、気分転換したり。そんな一日。完成するまでは、まだまだ、そういう日が続く予定。

オンライン作曲ワークショップ「北斎&七夕」

「すみゆめの七夕」の企画で、本日は、オンライン作曲ワークショップを開催。

 

第1回が「北斎の描いた楽器から想像する」で、第2回が「七夕の星空の音楽をつくる」。どちらも参加者から積極的に意見がでて、面白い音楽のアイディアが湧き出てきた。

 

北斎の描いた楽器から想像するでは、北斎漫画に描かれた楽器の絵を見ながら、色々語り合い、想像し合いました。木琴を演奏する人が、バチを高々と振り上げているし、これは、メロディーなどを奏でているのではなく、音階などはランダムで、ピッチのない打楽器として音を出している、という解釈。そう考えると、鍵盤は音階になっていなくて、1オクターブ内におさまる程度で似た音域の音板が並んでいると想像した。木琴は、時々、意図せずして隣の鍵盤を同時に鳴らしてしまうだろうと想像。木琴が指揮者の役割でみんなが木琴の奏でる拍を基準に演奏する。箏は、邦楽の古典の平調子で演奏。テンポは決して速くない。木琴、尺八、箏の3人でトリオになっている(三曲合奏)が、そこから少し距離を置いたところで胡弓が客観視して、そこにアドリブで音楽の不足要素を補完していく。そんな音楽を想像した。

 

一方、七夕の星空の音楽をつくるでは、白鳥座、こと座、わし座などの七夕の星を見ながら、自由に手拍子をした。人によって、手拍子の仕方が色々あって、ランダムに叩く人、パターンをつくって叩く人、人の合間に入れる人、などなど。そんな中、基本になったパターンにのせて、メロディーを作ってみた。メロディーを作るにあたって、ドレミファソラシに、適当に#をつけていくことで、変わった音階を作ってみてから、メロディーを作った。各自が、音を選んでチャットにメロディーをドレミで書き込んで、作曲ができたり、各自が、歌詞を考えてチャットに書き込んで歌詞ができたりした。タイトルを考えて、意見がなかなか合わなかった後に、「一夜のゆめ」となった。

 

来週(19日)もオンライン作曲ワークショップがあり、「相撲とカラダのリズムを奏でる」と「隅田川の歌をつくる」の2回がある。まだ申し込み受付中なので、ご興味のある方は、ぜひぜひご参加ください。

 

TOP | 隅田川 森羅万象 墨に夢 - Sumida River Sumi-Yume Art Project

 

夜は、JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)の打ち合わせ。7月23日の豊岡アート縁日に向けて。野村と里村は京都から現地入りし、鶴見と樅山は関東からリモート参加する計画。そこで、リモート参加でワークショップでどんな役割ができるかを考えているうちに、野村は現場でマスクをして一切喋らないで、身振りだけをすることを思いついた。飛沫感染を防ぐために、野村は一切喋らない。でも、音を出したり、動いたりする。歌や言葉は、すべて、リモートで鶴見と樅山が言う、歌う。画面の向こうの飛沫はこちらに来ない。そうした感染防止の意味もあるが、その場で喋らずに身振りだけで動くのが、なかなか面白い(昔の教育番組「できるかな」のノッポさんみたいに)。ということで、アート縁日の準備で、いろいろ盛り上がる。

 

とよおかアート縁日を開催します!|豊岡市公式ウェブサイト

 

イギリスのRob GildonからツイッターオペラSet Opera Freeのために野村が書いた新曲「I am Jacsha. You are Bacsha.」のファーストテイクの動画が送られてきて、これを見て、大爆笑した。オペラ歌手の実力をまざまざと見せつけられる熱演。素晴らしく何度も見直した。こちらの意見を踏まえて、明日、最終テイクをとって、いよいよツイッターにて公開になる予定。超たのしみ!!

 

 

 

 

 

オンラインのための「帰ってきた千住の1010人」

アーティスト・クロストーク《オンライン》#01

ひょうたんから駒が出るようなはなし ーまち、人を動かす、名づけられない「作品づくり」について

 

というオンラインイベントに出演することになった。トーク出演は、野村とアーティストコレクティヴのNadegata Instant Partyで熊倉純子さんの解説も入る。YouTubeでのライブ配信。8月5日に開催。詳細は、こちら。

 

http://aaa-senju.com/p/12975

 

「四股1000」で四股を1000回踏むことは日常化して、すっかり馴染んでいる。自分の体がどう変化しているのかいないのかは、あまり自覚はないが、1000回踏んでも疲れないので、最初の頃とは少し変わっているのかもしれない。

 

5月31日に開催するはずだった「千住の1010人 in2020年」は、10月末に延期した。東京都内での1日の新たな感染者数報告も過去最高を記録している。当初想定していた1010人の演奏者が一堂に会してのイベントの開催は10月だとしても、現実的ではないだろう。だから、(1010人のうちの何割かの人々はリアルに集れたとしても)オンラインを駆使して、1010人が(バーチャルに)一堂に会する音楽会をしたいと思っている。今は、そのための様々な試行錯誤/実験の段階。金管楽器は音が大きいから人数を少なめに想定していたのだが、逆に、自宅では大きい音が出しにくい金管楽器を、広い公園で十分にディスタンスをとって集まるとか、船の上で吹くとか考えると、本来の想定人数よりも多い金管奏者が参加できるかもしれない。

 

本日もだじゃ研(だじゃれ音楽研究会)のメンバー約20名で、野村作曲の「帰ってきた千住の1010人」をオンライン上で合奏してみた。本日、試みたのは、

 

3 空耳ソーラン

4 どの方角 その方角

5 ケロリン

 

の3曲。これらの曲は、オンラインでなければ比較的容易に合奏ができるのだが、オンライン上では、様々な困難がある。しかし、こうした曲をオンライン用にアレンジをすることが可能だ。「どの方角 その方角」の冒頭の歌などは、オンラインだからこそユニゾンの歌がヘテロフォニーの複雑な響きになって効果的だった。「ケロリン唱」は通常だと簡単に合わせられるリズムが、自然に複雑化するので、野村のピアノ伴奏をつけてやってみた。こうした工夫を入れていくことで、本来の楽曲を超えていける気がしている。

 

こうして、今年1月に作曲した「帰ってきた千住の1010人」のZOOMアレンジを考えているが、原曲に忠実すぎない大胆なアレンジが必要になると思う。先月やった「Primitive Music」で全員で茶碗鳴らしたり、本をパタパタしたりは、かなり効果的だったので、こういうオンライン合奏に適した要素をうまく盛り込んだアレンジを考えていきたい。

 

 

 

 

竹川半首

宣伝!明後日と来週の日曜日に開催!

■「すみゆめの七夕」オンライン作曲ワークショップ with 野村誠

ZOOMを用いて参加者みんなで新たな楽曲をつくりましょう。

音符がわからなくても、楽器が弾けなくても大丈夫。身近なところに潜む音を引き出せるかも。

できた曲は北斎バンドにより、9月6日の演奏会で披露します。

 

7月12日(日)14:00~15:00 テーマ「北斎の描いた楽器から想像する」

7月12日(日)16:00~17:00 テーマ「七夕の星空の音楽をつくる」

7月19日(日)14:00~15:00 テーマ「相撲とカラダのリズムを奏でる」

7月19日(日)16:00~17:00 テーマ「隅田川の歌をつくる」

 

定員:各回10名(先着順)

※パソコンかスマートフォンによる音声と映像の配信ができることが参加要件となります。

※お一人一回の参加となります。参加希望日の前日までに参加申込フォームからお申し込みください。

※ワークショップ実施の様子は、一部、すみゆめWEB等で紹介します。

 

詳細・参加申し込みはコチラ↓

https://sumiyume.jp/event/tanabata2020/

 

ツイッター・オペラのプロジェクトに誘われて、新曲を作曲したので、大慌てでツイッターのアカウントを開設した。まだ使い方がわからないが、知り合いじゃなくてもフォローしたりリツイートしたりできるようなので、知り合いじゃない人で誰をフォローしようかと考えて、今年読んでいるDave Brubeckの本の著者、Phillip Clarkをフォローしてみて、彼のDave Brubeckの本に関するツイートをリツイートしてみて、ブルーベックの生誕100年なので、今年中に「Dave Brubeck100」を作曲しようと思う、と書いたら、いきなり著者からGood luck - that's something I'd be interested to hear! と返信がきて、びっくりした。

 

新型コロナウイルスの影響で、色々なイベントが延期になったりした。その代りに始まったことが色々ある。毎日、オンラインで四股を踏む「四股1000」の活動を、既に2ヶ月半も続けていて、それに伴って、今までやっていなかった過去のJACSHAフォーラムのトークのテープ起こしを次々にやっている。今日も、2017年に行った行司の木村朝之助さんとのトークを音読したし、夜には、明日に向けてテープ起こしをした。こんな機会にと、相撲に関する資料の整理をしているうちに、踏歌に辿り着き、今は熱田神宮に伝わる踏歌神事をベースに作曲をしている。

 

熱田神宮の踏歌神事は、「万春楽」、「竹川半首」、「浅花田」、「何それそれ」の4曲がある。今日、「竹川半首」を細かく分析して作曲した。これで、「万春楽」、「竹川半首」まで終わった。来週は、「浅花田」、「何それそれ」にも取り組む。神事をコピーすることが目的ではなく、神事をコピーするくらい細部まで模倣した先に、神事の表層ではなく奥から聞こえてくる隠れた歌にたどり着くことが目的。

 

その後、踏歌神事の「竹川半首」の歌詞を、動画と比べながら確認する。資料には、確かにこう書いてある。

 

たけかはの はしのはしのをつめなる

はなそのに はなそのに

われをわれをいれよやめさしそめせん

まいやめさしそめけん

 

ところが、実際に歌われているのは、最初の二行だけ。後半二行はどこへ行ったのか。様々な動画を探してみても、やっぱり最初の二行で終わっている。 

 

たけかわの 

はしの はしの をつめ なる

はなぞ のに はなぞ のに

 

そして、さらには、「花園に」と歌っていると思ったが、「はなぞ」、「のに」が完全に分断されている。これは、「花ぞ」、「野に」と歌っているのではないか?

 

踏歌神事は、熱田神宮住吉大社に残っていると言われる。熱田神宮の踏歌神事をかなり詳細に分析し続け、暗唱できるくらいまで聞き続けたし見続けたので、今まで敢えて見ていなかった住吉大社の踏歌神事の動画をネット上で探して見てみた。見比べてみると、類似点がたくさん出てくるか、と思いきや、類似点を探す方が難しい。熱田は男踏歌の流れなのだろう。舞人は男。住吉は女踏歌の流れなのだろう。舞人は女。人数はどちらも4人。歌も舞も、似たところを探す方が難しい。思った以上に全然違って、びっくりする。もし、どちらもが踏歌と言われなかったら、同じジャンルと思わなかったかもしれない。

 

住吉大社の踏歌神事は、白拍子舞と熊野舞という名称がついている。白拍子に関しては、最近、沖本幸子著「乱舞の中世 白拍子・乱拍子・猿楽」という本を読んでいて、そこでも何度も出てきたので、時代は違うけれども、今様などの歌があり、足拍子的な舞があって、踏歌とも似ているな、と思っていたが、住吉大社の踏歌神事に白拍子舞があったことが意外。

 

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踏歌と源氏物語

「四股1000」73日目。鶴見さんが沖縄民謡の「屋嘉節」を歌ってくれたが、太平洋戦争についての歌メシアンの「時の終わりのための四重奏曲」だけでなく「屋嘉節」も捕虜収容所で作曲されたものだ。ぼくは、相変わらず行司の木村朝之助さんとのトークを音読中。行司とは、人と人の間に入る仕事、という言葉が印象的。力士と力士の間に入って立ち合いを見守るだけでなく、力士と親方の間に入って結婚式のコーディネートもする。行司はコーディネーター。

 

午後、門限ズのミーティング。来週の愛知大学での授業に向けて。ずっとオンラインで行っていた授業が、対面での授業になる。せっかくだから、スタジオの床に1.5mで格子を作って、それぞれのマス目に常に一人しか入れない、というルールで何ができるかやってみたい。

 

箏曲家の山本亜美さんの委嘱での新曲の作曲がつづく。現在は、熱田神宮の「踏歌神事」をリサーチして作曲している。まずはYouTubeにある踏歌神事の動画をできるだけ細かくトレースしている。とにかく、平安時代から伝承され続けている「踏歌神事」を自分の体に転写すべく、ビデオを分析し続けて、とにかく動画とシンクロして合奏できることを目指している。まず、体に音楽を落とし込んで、それを楽譜に書いている。こうして書き起こした音楽を起点に作曲していく予定だ。新曲は、10月に開催される山本亜美さんのリサイタルで世界初演される予定。疫病を祓う祈りの歌を、歌ではなく二十五絃の音楽にしようと思う。

 

夜、佐久間新さんから、「カエルケチャ祭り」の振り返りとしてのお食事にお誘いを受ける。イウィンさん、里村さんと4人で。久しぶりの外食であるが、貸切ではないのに、他にお客がいなくて貸切状態だった。新型コロナウイルス禍で外食産業も大変。佐久間さんは、本当に素晴らしいダンサーだ。問題行動マガジンに次々に投稿する佐久間さん。新しく投稿された悩みの相談は、相談がないので、自分で自分の悩みに答えている。自由だ。でも、悩みがある人は、遠慮なく佐久間さんに投げてみましょう!

 

問題行動 悩みの相談室 03 – 問題行動マガジン

 

明日の「四股1000」に向けて、朝之助さん対談テープ起こしをして後、踏歌神事リサーチ会議。今日は、「万春楽」を終えて、「竹川半首」のところを作曲していたのだが、歌詞が謎。

 

たけかはの はしのはしのをつめなる

はなそのに はなそのに

われをわれをいれよやめさしそめせん

まいやめさしそめけん

 

これは、57577になっていないし、和歌だったのではないかと思って、無理やり57577に整理してみる

 

たけかはの

はしのつめなる

はなそのに

われをいれよや

めさしそめせん

 

となり、

 

竹川の

橋のつめなる

花園に 

我を入れよや

目刺し染めせん

 

あたりが、もとだったのかな?と想像する。神事と思って聞くと意味不明だが、橋の向こうの花園に入れてくださいとナンパする歌かなぁ、と思ってみると、だんだん恋のうたのような気がしてくる。踏歌は、もともとは歌垣で、歌垣は男女の歌でのやりとりで、古代の「はないちもんめ」のようなもので、あの子が欲しい、と欲望と交流の歌の交わりだったのだろう。それが、神事になっても、歌詞には歌垣時代の名残がある。そんなイメージで聞く。

 

里村さんが調べてくれて、源氏物語の第23帖の「初音」に男踏歌が出てきて、その中で「竹河」が舞われている。源氏物語の原文や現代語訳を読んでみて、平安時代に描かれた情景と熱田神宮の神事が、ほとんど同じであることに驚愕する。

 

源氏物語 第二十三帖 初音 第三章 光る源氏の物語 男踏歌

 

 

心の中で歌う

今朝の「四股1000」で、コントラバス奏者の四戸さんが「ワニのオーケストラ入門」の指揮者の項目を音読してくれた。感想戦で指揮者の話でも盛り上がった。

 

今週は、作曲。現在のテーマは、熱田神宮の「踏歌神事」。疫病や邪気を祓うための神事を思う中、四股や相撲から、「踏歌」について考えるようになり、それが大陸から伝来した踏歌ともともとあった歌垣が融合していく。そうしたことを調べていく中で、現在、作曲中。

 

隠れキリシタングレゴリオ聖歌を心の中で歌いながら、伴奏として箏を弾いていたのが、「六段」だと言われる。今、この「踏歌神事」を心の中で歌いながら箏で伴奏する曲を作曲している。「心の中で歌う」は、現在のコロナ禍で歌うことを制限する教育委員会が音楽の授業では、心の中で歌うことを推奨したことでも知られ、松平敬さんが「心の中で歌う」という新曲を作曲した。で、今日は専ら「踏歌神事」の伴奏を作曲していた。そうして伴奏を作曲していくうちに、「踏歌神事」から本当に雄弁な歌が聞こえてきた。

 

夕方、鍵盤ハーモニカ五重奏のPーブロッの遠隔リハーサル。別にコンサートの予定があるわけではなく、2010年に開催したコンサートで、「次回超未定」と題して以来、10年間も活動がなかったが、10年ぶりのリハーサル。吉森くんがパソコンのOSの都合で参加がかなわず、しばてつ、鈴木潤林加奈と野村の4人でやってみた。まずは、野村が作曲してきた「バスに合わせて」をやってみるが、思ったほどタイムラグがあり過ぎるわけでもなく、ちょっと遅れ気味だったりして、アンサンブルに支障をあまり感じない。しばさんが書いてきた「ZOOM Nerima」では、裏拍をキープするパートを聴きながら、各自が演奏すると、タイムラグがあるのでビートはずれるのだが、それぞれが確信を持ってずれて演奏することになるので、結果として、独特なグルーヴが生まれる。ぼくの書いた「Ensemble for ZOOM」では、タイムラグがあって、ユニゾンがディレイになって複雑にずれるサウンドになるはずが、思ったよりもタイムラグがなく、20人とか25人くらいでやると多いっきりずれる人が出るけれども、4人とかだと、それほどずれないなぁ。この曲の後半で、いくつかの和音が同時に鳴ったりずれたりするのは、思った以上に効果的だった。いろいろ可能性を感じたので、今後も少しずつ探求していきたい。

 

その後も、「踏歌」の作曲作業。夜は、ドラマトゥルグを担当してもらっている里村真理さんと「踏歌リサーチ」会議を持つ。熱田神宮の「踏歌神事」では、

 

万春楽

竹川半首

浅花田

何そもそも

 

という4曲を歌っていることが分かった。「なにそもそも」の歌詞が面白い

 

なにそもそも なにそもそも

あや かや  にしき かや

なにそもそも

 

なにそもそも なにそもそも

いと かや  わた かや

なにそもそも

 

なにそもそも なにそもそも

いね かや  もみ かや

なにそもそも

 

名古屋出身なのに、熱田神宮に、こんな面白い神事があるとは今まで知らなかった。熱田神宮には、「オホホ祭り」(酔笑人神事:えようどしんじ)という神事もあるらしく、ちょっと動画を見てみたが、それも可笑しかった。神事の懐の深さ、面白い。

 

 

相撲づくしの七夕

京都は、かなり土砂降り。梅雨、真っ只中。七夕。本来、相撲節会は七夕に開催されていて、野見宿禰当麻蹴速の相撲も7月7日だ。ということで、本日も相撲づくし。久しぶりの「四股1000」。鶴見幸代が昨日亡くなったモリコーネの追悼で、「続夕陽のガンマン」を鍵ハモにアレンジして演奏。ぼくは相変わらず、行司の木村朝之助さんとの3年前の対談を音読。立ち合いが呼吸が見事に合った時は、本当に気持ちいいらしいし、手をついているかいないかは、行司は上から見るので、完璧には見えないという話。でも、自分の感性を信じて、立ち合いの呼吸がよければ、ついていると信じて止めない、という話。あとは、割を割るという話。取組のことを割という。

 

四股が終わった後、モリコーネをいろいろ聞く。昔、ジョン・ゾーンモリコーネをカバーしたアルバムを愛聴していた。今は手元にない。

 

午後は、熱田神宮の踏歌神事のビデオを見続ける。新曲の作曲のためのリサーチ。4人の舞人が3周して、それぞれ礼をする。その後、卯杖舞、扇舞がある。その間、陪従が歌っているのが踏歌。詩頭の詔文という祝詞の奏上のような時に、お面をつけた高巾子役が、デンデン太鼓のような楽器(振鼓)を振る。ということで、陪従の歌っているものを、ずっとビデオを見ながら分析していき、自分なりに理解するための楽譜を書いていく。何十回と見続けて、だんだん節回しや展開を覚えてくる。最後には、動画の笛と歌と合わせて、ピアノを弾いてみた。昨日は、ただぼんやり見ていた踏歌が、かなり解像度をあげて、細部まで見え/聞こえてくるようになってきた。こうしたものが、新曲の背骨になる。

 

その後、新曲「世界をしずめる 踏歌 戸島美喜夫へ」を作曲に対して、ドラマトゥルグをお願いしている里村さんと会議。本日の作曲作業を解説しつつ、卯杖舞、扇舞について、話し合う。そもそも、卯杖舞の「卯杖」とは何か、から始まる。卯杖は邪気を祓う杖。熱田神宮の踏歌神事では、踏むと言いながら、四股やネッテイ相撲のように、大地を踏みしめるような動作が見られない。住吉大社の踏歌神事では、どうなのだろう?明日は、住吉大社の踏歌神事の動画も見てみよう。

 

夜、竹澤悦子さんと、新曲「初代高砂浦五郎」の譜読みの確認をする。オンラインでも、三味線の音色で実際に奏でられるのを聞くと、魅力いっぱいでかなり楽しみ。竹澤さんの歌声で歌われると、引き締まる。今は譜読みの段階なので、1ヶ月後にどうなっているか、本当に楽しみ。なかなかの大作で歌いっぱなしだ。「狸囃子」の時の木ノ下裕一くんも力作テキストだったけれども、今回の一ノ矢さんも本当に力作。演奏者には負担が多いけれども、聞きごたえは十二分にある。超楽しみです。