野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

踏歌と源氏物語

「四股1000」73日目。鶴見さんが沖縄民謡の「屋嘉節」を歌ってくれたが、太平洋戦争についての歌メシアンの「時の終わりのための四重奏曲」だけでなく「屋嘉節」も捕虜収容所で作曲されたものだ。ぼくは、相変わらず行司の木村朝之助さんとのトークを音読中。行司とは、人と人の間に入る仕事、という言葉が印象的。力士と力士の間に入って立ち合いを見守るだけでなく、力士と親方の間に入って結婚式のコーディネートもする。行司はコーディネーター。

 

午後、門限ズのミーティング。来週の愛知大学での授業に向けて。ずっとオンラインで行っていた授業が、対面での授業になる。せっかくだから、スタジオの床に1.5mで格子を作って、それぞれのマス目に常に一人しか入れない、というルールで何ができるかやってみたい。

 

箏曲家の山本亜美さんの委嘱での新曲の作曲がつづく。現在は、熱田神宮の「踏歌神事」をリサーチして作曲している。まずはYouTubeにある踏歌神事の動画をできるだけ細かくトレースしている。とにかく、平安時代から伝承され続けている「踏歌神事」を自分の体に転写すべく、ビデオを分析し続けて、とにかく動画とシンクロして合奏できることを目指している。まず、体に音楽を落とし込んで、それを楽譜に書いている。こうして書き起こした音楽を起点に作曲していく予定だ。新曲は、10月に開催される山本亜美さんのリサイタルで世界初演される予定。疫病を祓う祈りの歌を、歌ではなく二十五絃の音楽にしようと思う。

 

夜、佐久間新さんから、「カエルケチャ祭り」の振り返りとしてのお食事にお誘いを受ける。イウィンさん、里村さんと4人で。久しぶりの外食であるが、貸切ではないのに、他にお客がいなくて貸切状態だった。新型コロナウイルス禍で外食産業も大変。佐久間さんは、本当に素晴らしいダンサーだ。問題行動マガジンに次々に投稿する佐久間さん。新しく投稿された悩みの相談は、相談がないので、自分で自分の悩みに答えている。自由だ。でも、悩みがある人は、遠慮なく佐久間さんに投げてみましょう!

 

問題行動 悩みの相談室 03 – 問題行動マガジン

 

明日の「四股1000」に向けて、朝之助さん対談テープ起こしをして後、踏歌神事リサーチ会議。今日は、「万春楽」を終えて、「竹川半首」のところを作曲していたのだが、歌詞が謎。

 

たけかはの はしのはしのをつめなる

はなそのに はなそのに

われをわれをいれよやめさしそめせん

まいやめさしそめけん

 

これは、57577になっていないし、和歌だったのではないかと思って、無理やり57577に整理してみる

 

たけかはの

はしのつめなる

はなそのに

われをいれよや

めさしそめせん

 

となり、

 

竹川の

橋のつめなる

花園に 

我を入れよや

目刺し染めせん

 

あたりが、もとだったのかな?と想像する。神事と思って聞くと意味不明だが、橋の向こうの花園に入れてくださいとナンパする歌かなぁ、と思ってみると、だんだん恋のうたのような気がしてくる。踏歌は、もともとは歌垣で、歌垣は男女の歌でのやりとりで、古代の「はないちもんめ」のようなもので、あの子が欲しい、と欲望と交流の歌の交わりだったのだろう。それが、神事になっても、歌詞には歌垣時代の名残がある。そんなイメージで聞く。

 

里村さんが調べてくれて、源氏物語の第23帖の「初音」に男踏歌が出てきて、その中で「竹河」が舞われている。源氏物語の原文や現代語訳を読んでみて、平安時代に描かれた情景と熱田神宮の神事が、ほとんど同じであることに驚愕する。

 

源氏物語 第二十三帖 初音 第三章 光る源氏の物語 男踏歌