野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

島袋道浩『音楽が聞こえてきた』/肥後琵琶リサーチ10回目

美術館の島袋道浩くんと電話。7月5日に、彼の横浜での展覧会場にてライブパフォーマンスするので、そのことについて。

www.bankart1929.com

 

3月から肥後琵琶のカオス、肥後琵琶の多様性を岩下小太郎さんから教わっている。今日は10回目。3ヶ月、10回目を経て、記譜についての話になった。

 

肥後琵琶は当道座の座頭たち、盲人による語り芸であるので、当然ながら楽譜などは存在せず、口伝で継承されてきている。もちろん、明治期に活動された永松大悦さんのように、晴眼者の琵琶弾きで譜本(玉名市歴史博物館所蔵)を残しておられる方もいる。

 

筑前琵琶旭会の新しい記譜法を教えていただく。ある種のタブ譜のようなもの。小太郎さんが筑前琵琶を弾くのを初めて聴く。小太郎さんは、もともと筑前琵琶を習っていて、途中で肥後琵琶に転向されたので、筑前琵琶も達者であるが、ご本人によれば久しぶりに弾いたので、不本意であったようだ。五弦の筑前琵琶で肥後琵琶の手を混ぜて弾くのもハイブリッドで新鮮であった。

 

www.youtube.com

 

10回を経て、次なるフェーズとして、橋口佳介さんによる『狐葛の葉』を自分なりに少しずつ五線譜に書き起こしてみて、毎回、小太郎さんと共有/確認していくことをしてみようと思う。口伝で継承されている音楽は耳だけで伝承されるべきとも思うが、晴眼者で西洋音楽にも触れてきた自分の耳と目で一度楽譜化していきながら、そこで聞き落としている課題を炙り出していこうか、と思っている。

www.youtube.com

 

帰り、小太郎さんに送っていただく車の中で、筑前盲僧琵琶の北田明澄の『地神経』を聞く。冒頭6分半まで琵琶は鳴らない。

www.youtube.com

 

本当に肥後琵琶発祥350年の記念すべき年に、こうして肥後琵琶から垣間見える混沌とした琵琶の奥深さを味わえるのは、非常に幸福なことである。10月26日には、八千代座で、350年を祝した催しがあり、肥後琵琶、筑前琵琶、薩摩琵琶と多様な琵琶の世界を味わえる。

eplus.jp