野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

肥後琵琶リサーチ9回目

肥後琵琶リサーチの9回目。肥後琵琶乃会の岩下小太郎さん、後藤昭子さんから学ばせていただいている。いきなり今日は美少年の話である。俳優の朝比奈琉良さん(下川床琉良さん)は鹿児島出身で薩摩琵琶とご縁のある方だそうで、この方の写真集をお二人がコーディネートされたそうで、琵琶を持って写っている写真もあり、琵琶を愛するお二人が様々な切り口で活動されているのが本当に面白い。

 

trustar.co.jp

 

お二人からは、熊本人気質についても色々教えていただいているが、今日初めて聞いたのが、「肥後の引き倒し」という言葉。成功している人の足を引っ張ったり、あげ足を取ったりするのだと言う。基本的に成功者に対して冷静に分析をし批評をするのだが、本人に直接アドバイスしたりせず陰口であるとのこと。ちなみに、他の県民に対して、そんなことはしないらしい。

 

肥後の引き倒し - Wikipedia

 

陰口と言うと悪いことのように思い込んでいたが、これをお二人が本当に楽しそうに語ってくださるので、悪いことではないんだな、と思えた。確かに、熊本独自の風習であると言える。成功しても陰で批評される環境は、過酷とも言えるが、ある意味、引き倒されないように、さらに自分自身の目先の成功に溺れずに精進できる、とも言える。肥後人は、SNSの炎上などの遥か昔から「肥後の引き倒し」に負けずに生きてきたのだろう。

 

ちなみに、これまでに教わった肥後人気質では、「肥後もっこす」があり、がんこで自己主張が強いのも特長。柔軟なお二人を見ると、そんなに「肥後もっこす」なのだろうか、とも思うが、自分の信念を貫くお二人の姿勢を見ると、確かに「肥後もっこす」なのかもしれない。その一方で、「わさもん好き」(新しい流行に飛びつく)性質も持っている。

 

肥後もっこす - Wikipedia

 

琵琶にアンテナを貼っておられる小太郎さんからは、貴重な情報が色々飛び出てくるが、岡山の林原美術館で今月末から「平家物語絵巻」の展覧会があるらしく、どこかで是非見に行こうと思う。

www.hayashibara-museumofart.jp

 

筑前琵琶の巨匠の演奏(中村旭園さん、山崎旭翠さん)を録音で聞かせていただき、歌声も琵琶も見事な表情で圧倒される。

 

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肥後琵琶の西本常喜さんの《牡丹長者》を聞かせてもらい、これまで聞いた肥後琵琶のどれとも違う個性に驚く。肥後琵琶の多様性は徐々に体感していたつもりだが、まだまだ肥後琵琶の大海は広い。西本常喜さんの琵琶語りは、読経を連想させる部分もあり、琵琶のキーが変わるごとにお経のピッチが変わっていくような語りで、本当に面白い。西本さんの琵琶の手を実際に鳴らしてみる。

 

カンボジアレイ・チャールズと称される(しかし、カンボジアの山鹿良之と言うべき)Kong Nayの動画も見せていただく。

 

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韓国では郷琵琶という名称らしいといった話から脱線して、気がつくと韓国映画『風の丘を越えて西便制』とパンソリの話になる。

 

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自宅に戻って、夜にヴァイオリニストの加藤綾子さんとオンラインで話す。相変わらず面白い活動をしておられる。3月の高松市美術館での共演は、大変素晴らしかった。

 

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