野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

荒井良二展は本当に旅だった

里村さんと鎌倉の路地を少し散策してから、横須賀美術館へ。荒井良二の展覧会『new born いつもしらないところへたびするきぶんだった』が本日より開幕。この展覧会、タイトルの通りだった。ちゃんと迷子になれる展示。

 

順路と作品リストを渡されて、番号順に巡る展覧会を、マップとガイドブックを片手に順番に名所を巡る旅と喩えるならば、荒井さんの展示は、地図を持たずに迷子になりながら、いろんな発見をして行く旅だ。まさに「知らないところへ旅する」気分。

 

一つひとつの作品にキャプションをつけない。一つの絵だけで世界を区切りたくないからだ。展覧会全体が《new born》という新作で、これが一つの世界だ。この展覧会、何度もぐるぐる巡って、気がつくと戻ってみたりして、新たな発見をして、一日中いても新しい何かを見つけるような展示。

 

18時半から、荒井良二野村誠の『横須賀じゃあにぃ・出航』が開催された。定員40名のところに数百名の応募があり、抽選となったので、多くの落選になった方々には大変申し訳ない。その強運の40名+関係者が集う第2展示室で、荒井さんが「船が出るぞー」と叫ぶと、ぼくが鍵盤ハーモニカで伴奏し、会場の手拍子が始まり、荒井さんは民謡のように歌い出し、出航だから、ぼくはクマの乗り物に乗って吹きながら会場を巡り、ボーン踊りが始まる。お客さん全員と輪になって踊り、歌う。観客が集めた言葉を荒井さんが読み、ぼくはロバのオルガンを弾く。子どもの頃にあった記憶が、言葉として集積されていく。山形の花笠音頭のメロディーを舟唄のような感じで吹きながら、第3展示室へ移動。荒井さんは、廃材を組み合わせ色を塗り、ぼくは鍵盤ハーモニカを吹き、「逃げる子ども」の部屋で(実際に座っていられずに)歩き回る子どもと一緒に逃げてみたりして、荒井さんは語り始め、ぼくも吹き、ミニピアノを奏で、荒井さんは描き、投影されていく中、音楽と絵がお互いのペースで旅をしていく。演奏していると、楽器を奏でているのに、何かの声が聞こえてきたような時は何度かあった。バスの時刻があるので、20時ごろに終わるようにと言われていたが、荒井さんはちゃんと19時55分に終わる。5分ある間に、荒井さんがトークでぼくの音楽のことなど紹介してくれて、バスの時間だよー、のエンディングで見送る。今日のライブも、目的地が決まってないから、意外な道を通る旅ができた。やっぱり、知らないところに旅する気分だ。横須賀じゃあにぃ。無事、出航。

 

荒井さんが9日間通い続けた中華屋に今夜も行く。荒井さんも素晴らしかったけど、山形チームの展示を作っていくチームワークと柔軟性も、さすがだった。こんなチームで仕事できるのも、本当に素敵だなぁ。

 

arairyoji-nb.exhibit.jp