野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

編む 継ぐ む(世界初演)

山本亜美さんのリサイタルで、野村誠の新曲《編む 継ぐ む》の世界初演があった。会場の照明も、衣装も、全体としてコーディネートされていて、音だけでなく視覚的にも楽しめた。

 

1曲目の宮城道雄作曲《三つの遊び》が、わらべうたを題材にした曲で、宮城道雄って、こんなに遊びに満ちた音楽を作る人なんだ、と先達の偉大さを感じた。これは、13絃の箏で演奏。

 

2曲目は、ぼくの新曲。こちらは、25絃なので、楽器も大きいし、音域も広い。宮城の曲が日本のわらべうたを題材にしていたが、ぼくの曲はタンザニアやトルコのわらべうたも出てくる。演奏が進むにつれて、どんどん引き込まれていく。2ヶ月前に完成した曲だが、彼女は暗譜で演奏した。素晴らしい。

 

3曲目は、宮城道雄作曲《中空砧》を13絃で。どうして、また宮城の曲があるのだろう?と思ったが、演奏を聴いたら腑に落ちた。宮城最晩年の曲で、両手は使いまくるし、押手で半音上げたりして、音階にない音も作りまくっての演奏。13絃を目一杯活用しての音楽だけど、既に宮城道雄のこの曲は25絃を予言しているように聞こえる。このプログラムの中に入っているから、そう感じるんだけど。

 

休憩後の1曲目は、高橋悠治作曲《さむしろ》。この曲だけ、暗譜ではなく譜面を見て演奏。捉えどころのなさそうな曲だが、変に情念を込めた演奏をしていないところが、良い。だから、逆に音楽が勝手に語り始める。

 

最後の曲、森亜紀作曲《つむぐ》は、何度も再演している定番の曲だけに、表現豊かな演奏。

 

アンコールでは、故おおたか静流さんに捧げる「赤とんぼ」。おおたか静流さんの不在が、まだ信じられない。

 

9月11日まで(期間限定で)アーカイブ動画の無料配信が行われるとのこと。全編おすすめだが、野村の曲は、11:20あたりから始まる。約15分の曲。

 

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開演前には、仕事歌の研究者でもある上原律子さんとお話できた。その後、河野有砂さんと《うまれるひと うまれるふと》の校正作業。終演後は、インプロ・りぶる主宰のヴァイオリニスト/即興演奏家加藤綾子さんとお会いしてお話した。インプロを一部の限られた人のものとしてではなく、広く開いていこうとされる加藤さんの活動には、大いに賛同。微力ながら協力したい。

 

free-impro.jp

 

ホテルにチェックインの後、今日のコンサートの配信動画を聴いて、楽しむ。