野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

竹野相撲甚句/日田の「林遊楽」/つなぎ美術館/水俣遠足

JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)とKIAC(城崎国際アートセンター)との打ち合わせ。兵庫県豊岡市の竹野に伝わる「竹野相撲甚句」を調査し、2020年には《オペラ双葉山 竹野の段》を創作した。その創作プロセスは波田野州平監督による映画となり、今年度には上映会も予定している。

 

それと同時に、竹野相撲甚句を竹野小学校の金管バトンバンドに伝える活動もしてきた。地元に伝わる芸能が次世代になかなか継承されず、保存会の活動は高齢化で途絶えてしまい、地元の方からの提案で、我々作曲家が金管に編曲することで、違った形で地域の子どもたちに伝えていけないか、という試み。

 

しかし、2020年には、ワークショップ実施がコロナのため対面で実現しなかった。その状況を踏まえて、KIACとJACSHAで、現時点で実現可能な形で、子どもたちに継承していく活動を探るミーティング。

 

続いて、パトリア日田とのミーティング。大分県の日田は林業の盛んな町。ホールの15周年事業として、地域の方々と公演を作っていく企画に関わらせていただく。せっか林業の町で、木がふんだんに使われた響きの良いホール。カホン、木琴、日田杉で作ったヴァイオリンなどなど、木の楽器もいろいろ作れそう。そして、地域の合唱団や吹奏楽団など、音楽団体も関わっていただき、祝祭的な雰囲気のイベントになる。環境破壊とか地球温暖化とかSDGsとか、産業革命以降の200年間のツケが返せない限界まで来ているが、経済至上主義が未だに多数派である。しかし、時代は着実に変わりつつある。そして、日田とい町は、文化的にも自然環境的にも、時代を先取りしている土地のように思う。そして、林業というのは、100年単位の時間で考えないと成立しない産業である。だからこそ、2020年代に、100年先まで考えながら発信できる公演を、町の人たちと作れる場所なのではないか、と思う。今年度は毎月のように日田に通うことになる予定。「林邑楽」という雅楽のジャンルがあり、これは林邑という国から伝わったという意味で林の音楽という意味じゃないけど、同じリンユーガクという音で「林遊楽」ができればいいのかな、と思った。

 

その後、里村さんと、つなぎ美術館へ行く。3階では、大平由香理展。地域おこし協力隊として、津奈木に在住の日本画家。地域の素材を用いた岩絵具を用いての作品や、地域の風景や、取材に基づく思い出の食べ物の絵など。コロナで地域おこし協力隊をするのも、色々な模索があったに違いない。その上での現在地としての展示だろう。1階では、熊本縁の作家、境野一之展。美術館のコレクションの展示。異なる二つの作品の共通点を見つけながら、自分だったら、このコレクションをどんな展示にするかな、と想像しながら見る。役場庁舎の近くにある大掛かりな野外展示、柳幸典の作品と西野達の作品も鑑賞。水俣までドライブをして、水俣の町を走る。ドキュメンタリー映画水俣曼荼羅》を見た直後ということもあり、改めて、水俣の町を見ると色々な思いがある。駅前にチッソの工場が大きくある。水俣との物理的な距離が近いことで、水俣を身近に感じて、いろいろ学び直せる気がする。