野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

Beyond Notation : Music of Earle Brown

鍼灸に行き、体調を整えてもらう。昨日で「祇園精舎の宿題の」の作曲が終わったので、今日はひと段落。この1週間ストップさせ、各方面から催促などが来ていた事務作業を再開させる。

 

無農薬野菜の販売店に行ったり、家の中の観葉植物をどうするかとか、棚にCDを置いたり、洗濯したり、料理したり、家のことをいろいろする。

 

そう言えば、Rebecca Y. Kim編「Beyond Notation : Music of Earle Brown」(ミシガン大学出版)を読了。アメリ実験音楽の中でも、アール・ブラウンの音楽は、よく知らなかったが、こうしてまとめた論考集が出て面白く読んだ。この作曲家は、ジャズとシリンガー・システムと美術(ポロック、カルダーなど)の影響を受けていて、実は、ジョン・ケージ

と意見の異なる部分も多い。なかなかアメリカでは作品が演奏されず、もっぱらヨーロッパの現代音楽祭で活躍。作品は決して多くないが、作品にいたる途中のスケッチがアール・ブラウン財団所蔵でかなり残っているようで、そうしたスケッチを分析して作曲のプロセスを解析していくような論考もあった。作曲家のスケッチが掲載されているので、思考のプロセスを追体験できて非常に面白い。ぼくは、作品をつくる過程でのスケッチは、どんどん廃棄しているので、死後、こんな風に暴かれることもないなぁ、と思う。ブラウンは、ジョン・ゾーンの「コブラ」などに繋がっていく即興的なアンサンブルを指揮する先駆者としても名高いので、ブラウンが自作を指揮している姿を、生で体験してみたかった、と思う。

 

「千住の1010人 in 2020年」に向けて、タイのアナンとやりとりをする。現在、巨大な人形の指揮者の制作を実験中で、ヨードが試作した指揮者パペットの動画が送られてくる。こんなことが実現したら、すごいなぁ。楽しみだなぁ。と思うと同時に、昨日、突如、3月1日の「世界のしょうない音楽祭」が中止になり、コロナウイルス対策で、いろいろな催しが次々にキャンセルされていくことにも衝撃を受けているので、なんだか、5月31日に予定通りにイベントが開催されたら、本当に奇跡だなぁ、と有り難さが今まで以上に増す。そんな奇跡が実現できるのだったら、最大限の努力をしないとなぁ、と改めて思う。