野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

草木染めで衣装作り

相変わらず、ニワトリの声と美しい朝焼けで6時に目を覚ますタイのジークデーク村での生活です。今日は、午前中、皆さんが各自作業している間に、JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)の事務的なメールなどで、次年度の事業のことを進めたりしました。その後、ヨードさん、チャンさん、野村の3人で演奏するシーンの練習と打ち合わせをしました。

お昼ご飯のソムタムを、今日はマコトが作ってみよう、と作り方を教わりながら、作りました。

昼食後、収穫の終わった田んぼで、稲の茎を持ってきました。笛を作るためです。その後、小学校のそばのお寺の裏の森に行き、木の樹皮を削らせていただきました。草木染めをするためです。削る前に木にお祈りをし、削った後は、お経を唱えながら、削った部分に土をかぶせます。

その後、再び、ヨードさん、チャンさんと3人でリハーサル。一方、ヤーさんとリャオさんは、庭で火を炊き、削った木の樹皮をグツグツと煮詰めています。

「かずえつこと 即興のための50のエテュード」の47曲目「鏡の国のアレア」を作曲。あとは、ヘンリー・カウエルの伝記を空き時間に読んでいるのですが、ちょうど、250ページを過ぎたところで、1930年代頃のソ連の作曲界とアメリカ現代音楽の交流や、共産主義のことなどのところを読みました。実は、BBCのラジオで、ロシア革命100周年特集で、ソ連の作曲家特集の番組を10回に渡ってやっているのが面白く、毎日、1番組ずつ聴いているので、内容がリンクして面白いのです。

1)プロコフィエフスクリャービンの回
http://www.bbc.co.uk/programmes/b09czzvf
2)モソロフとロスラヴェッツの回
http://www.bbc.co.uk/programmes/b09d053s
3)ミャスコフスキとポポフの回
http://www.bbc.co.uk/programmes/b09d41qd
4)ショスタコーヴィッチとカバレフスキの回
http://www.bbc.co.uk/programmes/b09d43vv
5)クレニコフとプロコフィエフの回
http://www.bbc.co.uk/programmes/b09d46bw
6)スビリドフ、ウストヴォルスカヤ、ハチャトリアンなど、スターリン没後の回
http://www.bbc.co.uk/programmes/b09dxf86
7)シチェドリンとスビリドフの回
http://www.bbc.co.uk/programmes/b09dxtnb
8)グバイドゥーリナ、マルティノフ、シュニトケなどの回
http://www.bbc.co.uk/programmes/b09dy2tl


と同時に、社会主義リアリズムの民衆に分かりやすい音楽という発想に対する議論と、日本の各地で行われるアートプロジェクトに関する議論が、微妙に似ている気もして面白い。ショスタコーヴィッチのオペラを、レーニンが否定していく姿が、前大阪市長が、文楽などを否定していく姿に重なって見えるので、前世紀の話は本当に他人事ではない。

夕方、4時半、村の子どもたちが集まってきます。庭にシートを敷き、そこで無地のシャツが配られて、草木染めの説明が始まります。子どもたちと一緒になって、野村もシャツに輪ゴムなどでグルグル巻きにしていきます。これは、バンコクでのフェスティバルの衣装になるのです。できあがったら、樹皮をグツグツ煮た汁が入った大きな金だらいの中に沈め、さらに40分グツグツ煮ます。その40分の間に、昨日同様、野村の演奏を聴きながら子どもたちが絵を描き、そこから気に入ったところをカッターで切り抜き、台紙に貼っていきます。それにしても、この夕暮れ時の薄暗い中で、小学生にカッターナイフを使わせるのは、日本だったらリスクを考えて行われないかもしれませんが、タイの子どもたちは、平気にやっていました。誰も傷を負うこともなく。

三日月よりも細い月が出ています。また、新しい月が始まったのですね。草木染めのシャツができて、記念撮影の後、みんなで星空の下に干しました。いよいよバンコクへ出発するまで、あと3日。「かずえつこと 即興のための50のエテュード」の作曲も、あと3曲になりました。