野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

全員での集中ワークショップ

子どもたちがキャンプ状態のジークデク村のヨードさん宅。庭の芝生に、テントが3つはられていて、ぼくの部屋をでたところにも、テントが張られている。少なくとも、5つのテントが張られていて、通常の家族に加えて、13人の子どもと、3人の大人が滞在している。朝食だけで、一大イベントである。朝6時に目を覚ます子どもたちは、7時頃から楽器の練習を始める。8時の朝食まで待てないアクティブさ。一方、村のどこかのお寺からか、お経がスピーカーで聞こえてくる。

朝食後、ケーンを吹いているコー君の演奏と、鍵盤ハーモニカでセッション。ケーンと鍵ハモは、本当に相性がいい。セッションしているうちに、バンコクを朝4時に出たというタムさんとソーさんが車で到着。早朝は道が込まないとは言え、5時間ぶっ飛ばしてきたのかぁ。有り難い。今日は、ソーさんが来てくれたので、英語でワークショップを進めれば通訳してもらえる。これが、かなり心強い。

本日のワークショップは、小学校の大きな木の下。土曜日なので、学校は休みなのだが、もちろん学校に許可なんてとってないだろうし、学校の先生も来ないのだが、学校の敷地に入り、大きな木の下で9時にワークショップを開始する。快晴なので、ヨードさんの庭の芝生の上でワークショップをするのは不可能。木の下は、木陰になり、なんとかできそう。クメール音楽の演奏チームの子どもが5人、クメールダンスの子どもが4人、ケーンなどイサーン音楽と人形劇のチームの高校生くらいの子が3人、そして、ジークデーク村の子どもが10人ほどいる。

まずは、一人ずつの名前をアルファベットで書いた名札をつくって、みんなの服にはっていく。これは、随分、助かった。その後、「ワタシは、ーーデス。」と、全員が片言の日本語で名前を言ってくれた。最初に、みんなで「スイッチ」というボディパーカッションのゲームをやることにした。これは、3つのグループで初めて一緒に活動するので、まずは、お互いの音が聞こえるようにアンサンブルの力を高めたかったこともあって。そして、リーダーを子どもに担当してもらうことで、手遊びの面白い動きも出てきた。この動きは、パフォーマンスの中に使えそうだ。

「水を飲む ドゥムナム、学校、ロンリエン」の歌をおさらい。と言っても、ジークデーク村の子ども以外は初めてなので、覚えてもらう。その後、337拍子のリズム、1234の指揮などを試す。昨日までと違って、楽器の種類が増えたり、年齢の高い子どもが入ったことで、アンサンブルがより面白くなっている。

その後、人形劇のチームに実演してもらい、それに人形操作で、ジークデーク村の子どもが加わったり、楽器で加わったり、というアレンジを加えていく。さらには、クメールダンスの子どもたちに踊りで加わってもらい、最後にはジークデーク村の子どもにも踊りで加わってもらった。ということで、「337拍子」、「1234」、「ケーン音楽と人形と踊り」と3つのシーンを繋げての通し稽古をしてみる。いきなりリハーサルっぽくなったが、みんないい感じでやってくれた。

続いて、クメール音楽のチームの演奏を聴かせてもらい、これに、ジークデーク村の子どもが、今日の最初に「スイッチ」の中で出てきた手遊びを入れてみることにする。また、人形劇のチームに、ジョウロを使って仮面劇をしてもらうことにもしてみた。ということで、お昼休みまでに、まずまず進んだ。

ランチの後、自由時間にも子どもたちが楽器をやっている。ジークデーク村の子どもたちが、初めてケーンを吹いていて、それがだんだん演奏っぽくなってくるのを見るのは、なんとも嬉しい。また、子どもたちが自由に楽器を触っている時に、ふと叩いたリズムなどを、メモしておく。

午後は、また、「スイッチ」から始めた。今度は、交代で、みんなにリーダーをやってもらった。子どもたち一人一人のキャラクターや能力も、少しずつ見えてくる。できるだけ適材適所で、いきたい。ここで、リズム遊びをする中で、確信したのは、3つの別のグループが合体しているので、やはり子どもたちを混ぜて、コミュニケーションしてもらうべき、だということ。そこで、子どもたちをランダムに4つのグループに分けて、グループ別に音楽をつくって発表してもらうことにした。まずは、各グループのグループ名を決めてもらった。「アラーイ(何?)」、「タットゥトゥワム(ラオス語で、シャワー浴びてない)」、「ラムドゥアン(花の名前)」、「パティヤ・ワタシタチ(私たちの家)」の4グループに。楽器を使うこと、日本語を使うこと、タイ語を使うこと、という漠然とした課題で、4つ作ってもらう。

20分ほど各グループは、それぞれのキャラクターで創作。橋の下にいる猿を描いた「アラーイ」チームは、猿まねの得意なダンサーがいたし、橋の役を演じる子どもも可愛い。ムエタイの戦いとその音楽をやったのは「タットゥトゥワム」は、迫真の演技とグルーブするドラミング。静かにメロディーを奏でた「ラムドゥアン」は、大人しめの子どもが集まった静かなテイスト。ゾウに乗ってパレードしている様子を描いた「パティヤ・ワタシタチ」は、ケーンの音色にのせて、心地よい。この4つの力作を繋いで、一つのピースにした。2チームのつなぎを工夫しながら、タイの文化が色々と見えるショートピースができた。

4つのグループで、「スイッチ」の要領で、各グループごとにユニゾンのリズムをやってもらう4パートのアンサンブルを試みる。最初はボディパーカッションだけから初めて、徐々に楽器に移行。これまた、すごいグルーヴになって、心ときめく。

最後に、少し、お経のフレーズからリズムアンサンブルを試みて、今日は終了。朝9時から夕方4時まで、充実の7時間。

ヨードさんの家に戻り、ぼくはシャワーを浴び、一休み。その後、ソーさん、タムさん、ヨードさんと、打ち合わせ。25、26日のバンコクでのフェスティバルの打ち合わせ。2日間で、合計4ステージ。音響のこと、ステージのこと、照明のこと、搬入のこと、衣装のこと、などなど、打ち合わせを終え、夕食をすませると、ソーさん、タムさんは、車で、バンコクに帰って行った。片道5時間、往復10時間の運転で、日帰りとは。感謝。

「かずえつこと 即興のための50のエテュード」44曲目の「100カウント」を作曲。9時前に就寝します。