野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ささやかな小径

淡路島での瓦工場の見学の2日目。瓦工場には、必ず煙突と坂があります。煙突は煙を出すためですが、坂はダンプが粘土を運んできて、粘土を機械の中に、上から入れるためです。スケボーの練習をするためではありません。

運ばれてきた土から、瓦用の粘土に圧縮されていく機械を見せていただいたり、機械をどうやって使うかを実演していただいたりして、ますます瓦への距離感が近くなりました。地元の土で瓦を焼いているのは、淡路島だけのようで、今では土を他の土地から買っている所が多いようです。

一口に瓦と言っても、色々な種類があり、工場によって、色々なパーツを生産していまして、その分業ぶりにも、驚きます。屋根の上の瓦が、色々なパーツから成っているのだ、ということは、理解はしておりましたが、それが、これほど別々の工場からやってくる、ということは知りませんでした。凄いことです。そして、それほどまでに、色々な種類があるため、楽器として考えた時、様々な種類の瓦の組み合わせだけでも、音色も音域も、可能性があるわけです。それに加えて、鬼瓦のように手作業で新たなデザインをつくっていくことまで考えると、本当に可能性は無限です。

瓦の展示をしている産業文化会館、瓦を学ぶ学校にも足を運び、さらには瓦太鼓を試みる幼稚園にまで足を運びまして、次年度は一年通して、瓦の音楽を探究する見通しが立ちました。そして、次々に瓦工場が廃業/閉鎖している現実のお話も伺い、縮小/衰退していく伝統産業、中小企業の厳しい現実を伺いました。瓦の音楽は諸問題を打開する特効薬ではないので、こうした現実に音楽で貢献できるわけでもないかもしれません。しかし、津井の瓦業界と、アートの世界、津井の外の世界、瓦以外の世界の間に、ささやかな小道をつくりたい、と思っています。

そして、久しぶりに京都の自宅に帰って来ました。