野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

鍵盤ハーモニカと現代音楽

日本現代音楽協会の主催で、鍵盤ハーモニカの作曲についてのレクチャーをしてきました。鍵ハモの可能性を本気で考え始めたのが、1996年ですから、ちょうど16年前で、その当時、本気で10年続けると宣言していましたが、鍵ハモについてのレクチャーを日本現代音楽協会が開催する時代が、こんなに早く訪れるとは、思っておりませんでした。そして、今日、楽器の説明や、数々の奏法を解説し、実際にどんな楽曲が書かれてきたかを解説してみて、この楽器の独自性について、改めて認識しました。

鍵盤ハーモニカというのは、非常にピッチが不安定で、調律も狂いやすい楽器です。そして、さらには、バス鍵ハモにいたっては、その傾向が顕著です。そして、その特質を楽器の性能の悪さと捉えてしまうこともできます。

しかし、考え方を変えると、そのことこそが面白いのです。ピッチの不確定性原理、と呼ぶこともできるでしょう。息の強さでピッチが微妙に変化するので、微妙な不確定性をポジティブに捉えて創作すると、こんな面白い楽器はないのです。その微妙なピッチの重なり合いにより生まれる響きの唸りは、ガムランの豊かな音色にも通ずるところもあると思うのです。

日本現代音楽協会は、これから、3分間の鍵ハモトリオの新作の公募を開始します(9月20日〆切)。そして、来年の2月頃に、数々の鍵ハモトリオだけから成る演奏会を関西で開催する、という予定です。はたして、いっぱい新作が集まってくるでしょうか?ワクワクした気持ちになりました。