野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

旅する音楽、旅しやすい音楽

ポータブル・コンチェルトのコンサートをやったわけですが、ポータブルとは、どういうことでしょう?ポータブルですから、やはり旅をしたいですね。今回はジーベックホールでやりましたが、山小屋から、民家から、カフェから、色んな場所を巡るツアーをしたいものです。

そういう点でいうと、打楽器の種類が多かったり、ヴァイオリンとヴィオラの両方を持ち運ばなければならない、となると、もっと荷物の軽量化ができるように思えてきました。

ギロとカスタネットとタンバリンとヴァイオリンだけ、といった一人1楽器だけで、最小の荷物で旅をする、そんなことを夢見ました。そして、譜面台を持ち運ばずに演奏できる。譜面をめくらずに演奏できる。そんなことも考えさせられました。まるで、カメラや電話の軽量化を研究する電気メイカーの社員たちのように、我々作曲家も、ユーザー(演奏家)のニーズに応えて、研究してみてはどうか、と思ったり。

もちろん、インドネシアガムランは、持ち運びするのに不便な大きな大きな楽器達ですし、ピアノなんかも、なかなか持ち運びできない楽器です。楽器を搬入するのに、トラックが必要だったりします。でも、それだけ巨大な楽器には、それなりの音色があったりします。

鍵ハモなんか、持ち運び便利で軽いですが、もっと良い音色にするために、ボディを木にできないか、と美術家にお願いしておりますが、そうなると、音色の代償に持ち運びがしにくくなります。

我々が定住していれば、楽器は持ち運べなくてもいいのですが、定住したくても避難生活を余儀なくされたりすると、音楽を持ち運ぶ必要も出てきます。

老人ホーム「さくら苑」で行われている「わいわい音頭」も、バリ島の寺院で行われる儀礼も、その場所から持ち運ぶことができない音楽ですが、「さくら苑」の音楽を外に持ち出せるようにポータブル化したのが、「老人ホーム・REMIX」です。一回性の場所と時間に限定される即興的な音楽の魅力を、時間と空間を旅させて、他のコミュニティの人々とシェアしていきたい。そのために、どうポータブルにするか、が課題なのだと思います。いよいよ、今週からは、「老人ホーム・REMIX #2」のドキュメンタリー・オペラの作業を本格的に開始です。

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