野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

復興のための駄洒落

本日、東京芸大の千住キャンパスにて、アートアクセスあだち「音まち千住の縁」のキックオフ・フォーラムが開催されました。足立智美さんのプロジェクト説明やワークショップのメンバーとの「ぬぉ」合唱パートの試演もありました。大友良英さんのプロジェクト説明もありました。そして、ぼくも、今考えていることや、千住で誰と出会いたいか、について語りました。福岡で行った「お湯の音楽会」を発展させた「千住のお湯の音楽会」をやりたいのと、「おじさんと駄洒落」で作曲するプロジェクトを提案しました。



インドネシアから日本に帰国して2ヶ月。この間、小さな子どもを持つ母親たちが、反原発や食の安全に関して、積極的に活動している場に何度も遭遇。デモ、勉強会、ワークショップ、フォーラムなどの場で、母親が非常にアクティヴな姿が印象に残りました。しかし、ぼくの同世代のおじさんは、そういった場に出向くことが少ないのです。そして、この男性優位社会の中で、こうした女性の声が、十分に尊重されていかない気もするのです。



ぼくの周囲には、原発反対の人ばかりです。でも、どこかに、原発推進や賛成や消極的容認の人がいっぱいいるはずですが、そういった人と話したくても、会えないのです。ぼくと接点のない世界に住んでいるようです。



でも、おじさん達不在で、デモやフォーラムやワークショップを進めていくのでは限界があります。日本が変わるためにも、社会が変わるためにも、そして、この男性優位社会の根本から変えていくためにも、おじさん達の力が必要です。でも、アート系のイベントにも、反原発の集会にも、食の安全の勉強会にも、生活の講習会にも、忙しいサラリーマンのおじさんは来たくても来れない。または、来たくないのかもしれません。でも、来て欲しいし、接点を作りたいのです。



ぼくは、何も、おじさん達を集めて、文句を言いたいわけじゃない。議論したいわけでもない。そんなことではなく、おじさん達と友達になりたい。多分、ぼくとは、全然価値観が違うかもしれない。ぼくの考えなど、全然受け入れられないかもしれない。それくらい価値観にギャップがあるかもしれないおじさん達と、友達になることから始めたい。どうやって?



そこで考えたのが、「駄洒落作曲」です。得意なオヤジギャグ、駄洒落で力を貸してもらう状況を作ろうということです。なんとか接点を持つところから始めるのです。そこから、どうやって音楽が創造できるのか?それは、ぼくへの大きな大きな宿題なんですけど、でも、駄洒落からでも音楽が作れないわけがない。また、そうしたおじさん達との交流をして作品を生み出すことこそ、今、チャレンジすべき大きな課題だと思うのです。(ぼくには、サラリーマンをしながら音楽家をしている兼業音楽家の友人がいます。しばてつ、近藤浩平、奥田扇久。彼らに相談する必要はありですね。)



そんなとんでもない構想を発表したところ、なんと、もの凄く反響があったのです。手伝いたい、参加したい、という声が大きかったのです。こうした反応自体も、震災以前とは違う熱を感じます。震災から半年経った現時点で、東京は相当熱いです。

ということで、ぼくの「原発のなくなる日のための」プロジェクト

第1弾は、横浜での「老人ホームREMIX #2 ドキュメンタリー・オペラ」
第2弾は、千住での「おじさん/駄洒落/作曲プロジェクト(仮称)」

となりそうです。ああ、ヤバいなぁ。10年間、小金井市であいのてさんやります、って宣言しちゃった上に、横浜の老人ホームでの共同作曲はライフワーク。宮城のえずこホールや、取手アートプロジェクトなど、長期で何度も関わるプロジェクトが、各地に増えていくのですが、どれもこれも継続していくと、それは、この上なく嬉しいことなのですが、ぼくの身体は一つしかないのです。80周年の後、ぼくがいなくても機能していくような仕組み作りまで含めて、やっていければベストなんですが、その前に、これから1年、結構、深く関わることになっちゃうなぁ。ま、ぼくの使命なのかもしれません。



それにしても、芸大の学生を中心とする若きスタッフ達のフレッシュなエネルギーは、とてもポジティブでした。足立区シティプロモーション課、NPO法人やるネ、東京都、それぞれが、みんな良い顔をしていました。このエネルギーを大切にしていけば、とても良い足立区政80周年(足立智美生誕40周年)を祝するイベントができると、確信しました。

近隣の人々や、スタッフでもない芸大生なども、顔を出しての話し合いが、自然に始まって、これまた、すごく良かったのです。

みんな、おつかれさまーーーー。ありがとう。これからも、よろしくねーーー!