野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

御手洗祭

「千住の1010人」のメンバーを集めるためのテキストを作文するように、千住の事務局から連絡が来ておりまして、暑いですが、頑張って作文しました。

そして、下鴨神社の御手洗祭で、膝まで水に浸かり、我々夫婦と、それぞれの両親の健康を祈願して、足のお札を浮かべて参りました。それにしても、水が冷たかった。

この度、大アンサンブルのための新作「千住の1010人」を作曲しました。ぼくが人生で書いた最大編成の作品です。弦142人、管254人、打301人、行為255人、指揮3人、進行役58人という人数を想定しているこの音楽に出演していただける方を、広く公募いたします。どうか、ふるってご参加下さい。

「千住」と「1010」の駄洒落が発端だったわけですが、ホセ・マセダの30人から数千人のための「ウドゥロッ・ウドゥロッ」(1975)、マーラーの「千人の交響曲」(1907)とは全く違った形の大編成の曲を作曲する野望もありました。マーラーだったら五線譜で管弦楽と合唱ですし、マセダだったら竹楽器と声の簡単な指示書きです。ぼくの新作は、もっと色々な楽器が出てきます。民族楽器(インドネシアガムランやタイのピパット)、弦楽器(ギター/ウクレレ)、管楽器(通常の金管木管に加えて、鍵盤ハーモニカやリコーダー)、打楽器(ジャンベカホン、鍋、フライパン、炊飯器、瓦など)、手づくり楽器、紙飛行機(池田邦太郎さん考案、下向きに投げても飛んでいく)、キャッチボール、縄跳び、さらには犬の散歩まで。

これは、色々な人が一同に会する場としての音楽です。限られた専門家だけなく、様々な音楽性、様々な考えの人が一緒に音楽をするのです。その上、ぼくが真に美しいと思う音楽を実現する。これまでの経験を総動員して、1010人の音楽を作曲しました。傑作を書いたという自負もあります。しかし、この音楽を体現するためには、皆さんのお力が必要なのです。

9月からリハーサルが始まります。事前のリハーサルには最低1回、可能ならば複数回参加していただきたいのですが、遠方の方、多忙な方も参加できるように、リハーサルの動画をインターネットで配信しようと計画しております。「千住の1010人」というタイトルですが、もちろん、足立区や千住に住んでいる人だけではなく、日本全国、世界各国から広く募集しております。

そして、スペシャルゲストは、タイの奇才アナン・ナルコンとインドネシアのカリスマ作曲家メメット・チャイルル・スラマットです。アナンの新作「Super Fisherman」は、みんなで楽器を持ち寄ってパレードして遊ぶ、祝祭的な音楽劇で、俳優の倉品淳子さんの語りで、各グループのリーダーの指揮で即興的に進行します。インドネシアで1,700人の音楽を作曲/上演した経験があるメメットは、新作「Senju 2014」を作曲してくれました。こちらは、躍動感溢れる大オーケストラで、楽譜の読める人は五線の楽譜を演奏し、楽譜が苦手の方は、手拍子のリズム、簡単な動きなどで参加します。

色々な楽器の音が混ざり合うこと、これぞシンフォニーの原点です。音が混ざると同時に、知らない人とも出会います。ひょっとしたら、この1010人をきっかけに友人ができたり、場合によっては恋人ができたりすることもあるかもしれない。そして、音楽の楽しさ、美しさを、今まで以上に体感する絶好のチャンスです。ご応募、心よりお待ちいたしております。(野村誠