野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

チェーホフ祭りでの矢内原美邦の新作

矢内原美邦さんの新作ダンス公演を見ました。

矢内原作品は、DVDではいくつも拝見しているのですが、生で見るのは、大雑把に言うと3度目。一つ目は、一緒にお仕事をしたえずこホールでの「演劇交響曲第1番 十年音泉」で。この時は、素人の住民の方々に振付していました。二つ目は、シアタートラムでのご自身ソロダンス。で、今回は、オーディションで集まった若手ダンサー達に、振付しておられました。そして、久しぶりに見たのですが、彼女の強いパッションは衰えることを知らない、と安心しました。

矢内原作品というのは、一見すると、アートと遠い広告業界のような印象を持ちつつ、しかし、根底にある強烈なパッションによってアートとして成立する、という独特な立ち位置に存在します。ご自身のソロの場合は、このパッションの部分こそが、強く表現されます。また、えずこの住民参加で行った舞台では、技術は少ないが味がある住民メンバーですから、パッションの部分こそ、強く印象づくのです。しかし、ある程度、ダンスの素養のある若手のダンサー達で上演すると、パッションの部分をしっかり表現できないと、単なる上品なダンスやカッコいい振付になりかねない危険性が強い。非常にドロドロした部分を、さらっと強烈に魅せるには、最高のテクニックと表現力をバランスよく駆使すること。

矢内原作品の音楽を、いつかはやる予定なのですが、その時は、ぼく自身、このことを自分自身に、ダンサーに、振付家に、投げかけながら、作品を作っていくのでしょうね。