野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

浜松と名古屋のライブを終えて。

キーボード・コレオグラフィー・コレクションのぱくりで、試しに鍵ハモトリオ・コレクションと呼んでみることにする。副題にAn Anthology of Enjoyable Contemporary Composersと仮につけてみる(もっと、言い名前があるような気がする)。紀貫之が「古今和歌集」とかセレクションしたみたいな感じ。「万葉集」とか「古今和歌集」とか「百人一首」みたいなもので、「鍵ハモトリオ集」を作る。同時代に生きる作曲家にフォーカスをあてたアンソロジーを作ってみたい。

こういう小品のアンソロジーは、ロバート・モランの「ワルツプロジェクト」の譜面を全曲演奏(フィリップ・グラスジョン・ケージ、ミルトン・バビットなどなどの作品があった)する上に、自分たちもワルツを作曲するというコンサートを20年前にやったことが、少なからず影響している気はする。でも、「ワルツ」という括りがあまり面白い設定には感じなかった。イヴァ・ミカショフの「タンゴ」プロジェクトとか、ガイ・クルセヴェックの「Ain't Nothing But Polka Band」とかも、いずれも舞曲のリズムを共通にして、いろんな作曲家が小品を提供しているし、高橋アキの「ハイパービートルズ」はビートルズのアレンジなのですが、、、、、ぼくは、もっと作曲家にフォーカスしたことをしたいと思った。

だから、3分の鍵ハモトリオ、というだけで、各作曲家が作品を書いている。場合によっては、作曲家ごとに何か要望を出したりしている。

それにしても、鍵ハモトリオという編成は、可能性がある。今回のライブで取り上げた作品群でも、一曲ごとに本当に違った響きが立ち上がっていた。しかも、メンバーを集めるのも、(少なくとも日本では)比較的簡単で、再演もしやすい。例えば、田中吉史さんの「うろおぼえの旋律とコラール」は、2007年に京都で初演(+林加奈、赤羽美希)、2008年に東京で再演(+赤羽美希、渡邊達弘)、2009年に浜松、名古屋で再演(+片岡祐介牛島安希子)と、既に4度演奏されている。

日本以外の国では、鍵ハモトリオは、非常に珍しい編成だ。でも、例えばイギリスでも、鍵ハモに興味を示している作曲家が何人もいる。そして、鍵ハモに興味を示している作曲家は、面白い作曲家ばかりだったりする。だから、鍵ハモと譜面と音源を持って、各地に種まきをできたらな、と思っている。鍵ハモトリオという編成は、(ハイドンの時代の弦楽四重奏みたいな感じの)スタンダードな編成になると思う。多くの作曲家が、これから鍵ハモトリオの作品を書くだろうし、鍵ハモを演奏していく。そんな時代が近づいている。

ま、まず、爆発的に展開するのは、まず日本から、だと思うけど、、、、。そういうことを感じる2日間のライブでした。東京に戻りましたが、ヘトヘトで、大井浩明くんのコンサートにも行けず、、、。