野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

Keyboard Choreography Collection4日目

神戸の震災から14年。14年前のこの日は、イギリスのリーズでヒュー・ナンキヴェルの家に泊まり、彼の家でテレビで神戸の震災について知った。あれから14年たった今日は、宮城県仙南大河原町えずこホールで、ヒューと新しいプロジェクトをやっている。

今日は、本当にすごかった。加藤くんが「違った国にいるようだ」と言ったけど、ピアノというものを、全く違った文化、違った文明が使ったら、こういうものにもなり得たかもしれない、ということを、みんなでやっていて、ピアノが喜んでいるように感じる瞬間がいくつもあった。ヒューによれば、ピアノのことを「口を叩くと叫ぶ黒い大きな箱」と表現する国があるらしい。でも、ピアノが儀礼の祭壇に見えたり、ストレッチするためのバーに見えたり、本当にいろんな物に見えてくる。

佐久間君が


KCC-T47 ピアノ椅子に座って、足を浮かせて、振り子やシーソーやブランコのように、前後に揺れながら、演奏する。前に来た時は鍵盤に触るが、後ろにふられる時は、鍵盤から手を離す。これを続ける。


をやり、あまりにも美しかったため、ヨシピロさんが泣きそうになったそうだ。そのゆったりした時間感覚と、美しい動きと音。ピアニストでもないジャワ舞踊家が、ピアノで人を泣かせることがあるとは!一度、Keyboard Choreographyを離れて、佐久間くんのジャワ舞踊で感じていることを体験する時間を午後に設けた。演じるのではなく、感じるダンス。無理するのでなく自然に発してくる動き。そうしたことを体感する時間だった。途中、気持ちよくて、床に寝転がり、眠っていたのか起きていたのか自分でも分からない時間もあって、その後、ピアノが弾きたくなって、自然にピアノに足が向かいピアノを弾いた。Keyboard Choreographyを経て、自分のピアノが上達しているというか、ピアノの感じ方が大きく変わっていることに気づく。そして、気持ちよくピアノが弾けた。こうした長い即興の時間の後、明日のための映像の編集に席をはずしていたヒューが戻ってきた。その時、ヒューは腕の毛の先でダンスを感じたそうだ。そして、目を閉じたら、瞼の奥でダンスと音楽を感じたそうだ。

こうして、明日に向けて、さらなるKeyboard Choreographyを続けた。明日は、Keyboard Choreogrphyの初公開です。アットホームな雰囲気でお迎えしたいと思っています。ご興味のおありの方、ぜひ、足をお運びください。