野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

スラバヤ公演

スラバヤ公演。金曜日は、特にイスラム教の特別な日らしく、午前中はずっとお祈りが聞こえてくる。インドネシアツアー中、お祈りの時間は、音だしが禁止されているので、リハーサルが中断される。

昨日のうちに会場でせめて楽器のセッティングだけは決めたかったが、今日の午前中に楽器の位置決め。今晩の公演だというのに。
と思ったら、午前中は、ずっとお祈りが鳴り響き、結局、音だしできるようになったのは、午後1時すぎ。それから楽器の位置決め。

前から後ろに袖幕が一枚ずつ増えていくとともに、音が会場にいかなくなっていく。楽器の響きを考えると、袖幕は全部取り払いたいくらいですし、照明や演出面を考えると、袖幕はあって欲しいわけです。

また、これまで碧水ホールでやってきたように、ホールのステージ上では上演せずに、客席と同じ空間の中にステージを設定して、できるだけ観客と演奏者が同じ響きを味わっている環境を作ろう、という考え方もあります。

で、今回は、ステージ上で、袖幕に音を吸収されながら演奏し、なかなかベストなコンディションで音楽をお客さんに味わってもらいにくいのですが、それでも最善を尽くすべく、一度セッティングした楽器を、50センチ前に出してみました。これで、ずいぶん、音はましになりました。

それと、エアコンの音で相当マスキングされる可能性があるので、本番と同じ状況を考えて、エアコンのスイッチを入れてもらいました。
なんとか、最低限の音環境が作れたので、ああ、よかった。

今日の公演では、

第4場の戦いの場面で、ぼくはボナンをたくさん演奏しました。これは、新傾向です。自分がピアノで深く呼吸をせずにたたみかけるように即興をしている時の感覚で、ボナンを弾いてみました。息つぐ間のない演奏を、ずーっと続けた後に、その対照的な、間の多い、呼吸したり、息をのむような間のある音楽になっていきました。家高さんの鬼と桃太郎が、一騎打ちになりそうだったので、ぼくはボナンを持って間に入った。戦いのシーンを劇にせずに、全部、音楽にしてやろうとするのが、ぼくにとっての戦いでもあります。この即興では、みんなが自分のフィールドに持ち込もうとするのです。

鬼が野村誠を、桃太郎が中川真を付き添って戦うシーンもでてきた。これも新傾向。ぼくが桃太郎に、真さんが鬼に殺されればいいのですが、我々は殺されませんでした。だから、鬼と桃太郎の一騎打ちがあっても、2人もいます。ぼくらは、殺される存在じゃないのかもしれない、とその時に感じた。妖精みたいなものなのか、風なのか、木々なのか、なんだか分からないけど、殺し合うのは人間で、ぼくらは殺すことも殺されることもできない存在として、その場に存在することを強いられているのだ、と感じた。

第5場の音楽は、美しく響いた。エアコンの音も含めて、ちゃんと音楽になったと思う。ここは、ジャカルタでもジョグジャでも中途半端だったので、しっかり味わって演奏できてうれしい。

ということで、全公演終了しました。みなさん、おつかれさま。