野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

なんとなく

アムステルダム在住の舞台美術家のスズケンさんと、建築家の山本さんとオランダ料理を食べに行く。

山本さんは、日本語にある「なんとなく」という言葉に思い入れのある人で、「なんとなく」というニュアンスが西洋人に伝えられないことにもどかしさを感じているようです。「なんとなく」決めたことを、without specific reasonsと訳すのは違うと感じていて、そうではなくて、いっぱいいっぱい複雑に入り組んだ理由や事情がありすぎて、それを全部しつくすことは無意味だと知っているから、そのことを一言で「なんとなく」に込めるのが日本人、とのこと。論理を超越する「なんとなく」の感性を、どうやってヨーロッパ人に伝えられるか、だったら、Nantonakuという言葉を、そのまま英語にしちゃえばいいんでは、と思ったわけです。

スズケンさんからは、あらたに、Ralph Koltaiという舞台美術家の話を聞きました。日本は舞台美術家という職業が、ヨーロッパに比べて、地位が低いというか軽んじられている傾向がある、というようなことらしいです。ということは、これかた真にクリエイティブな舞台美術家のあり方というのが、だんだん定着していく、そういう過渡期なんだろうな、と思います。