野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

岡崎さんの場合

第24回は、片岡さんの親友の音楽療法士岡崎香奈さんです。
講座の始め方とはいろいろあるもので、彼女は「音楽療法の歴史」から講座を始めています。
「ロッキングしかしない自閉症児に、始めはロッキングに合わせて忠実に音楽をつけ、途中から3拍子にした。子どもはロッキングがやりにくくなり、ふと音源であるセラピストの方を見た。それが(コミュニケーションの)きっかけとなった。」
とあって、こういうやり方を、片岡さんは岐阜で同僚だった岡崎さんから吸収して自分流に発展させたんだろうと思います。また、岡崎さんの説明も、片岡さんが語っている5つの心得と非常に似ていますが、唯一はっきり違うところは、「相手に劣等感を持たせない音楽の提供をすることが重要である」という一文。多分、片岡さんは、このことを自覚的にやらなくても、その独特のいじられキャラで天性の3枚目キャラなので、そんな心配はあり得ないのでしょうね。
この講演の締め括りは、
「自分のもっている音楽、自分しかできないものを生かすこと。ピアノがうまくできなくても声、タイコ、しぐさがある。自分が今何ができるか、今の自分を認めることから始まる。そうでないと相手に失礼だし、相手も認められない。自分を認めると相手も楽になる。」
と結ばれていました。導入は歴史とかから始まって、最後にはこういう言葉で結ぶ講演、なかなか優れものです。一方、片岡さんのように、本人の(一人の)名人芸演奏から始まり、最後は全員でしょうぎ作曲の演奏に終わるという音楽に始まり音楽に終わる講演会も、やはり素晴らしい。

こうやって、記録をとるということは、40回も続けると力になりますねぇ。幸弘さんとの映像もそうですし。音楽にしろ、ワークショップにしろ、講演会にしても、形のないその場限りの体験です。で、ぼくは作曲家というそれを書いて残すことを探求しているので、色んな意味で書いて残すことに興味があります。幸弘さんとの映像で残すこともそうです。ワークショップや講演会も、色んな形で残していくと面白いですね。それにしても、色んな人の講演録を読むと、勉強になります。

滋賀県音楽療法研究所の皆さん、ありがとうございました。これからも続けていってください。