「地球人」という雑誌のための対談で、翻訳家の上野圭一さんと対談です。
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昨年3月、「ヒトと動物の関係学会」で発表したときに、こちらの編集の高松さんと出会いました。
http://d.hatena.ne.jp/makotonomura/20060325
「ヒトと動物の関係学会」で動物関係の展開があるかと思ったら、医療に関する対談で、本日のテーマは「音楽セラピー」だそうです。それで、医療の専門家の上野さんと音楽の専門家の野村誠が対談をするわけです。
明治以後に、医学も音楽も、ドイツ直輸入で、当時のドイツ医療、ドイツ音楽を取り入れて、逆にそれまであった日本独自の医療や音楽の流れが途切れてしまったところが似ているわけです。山田耕筰がドイツに行って色々持ち帰ってくるように、森鴎外とか、北里柴三郎とかがドイツに行って、いろいろ持ち帰ってくるらしいのです。で、当時のドイツには、西洋医学以外に、例えばホメオパシーなども市民権を得て来ていたりしたはずなのに、北里は、そうしたものは、持ち帰らなかった。また、北里の最初の師匠のペッテンコーフェルという人は、コレラ菌がコレラを誘発するが、コレラ菌が体内に入っても、体力があって自然治癒力があれば、必ずしもコレラになるわけではない、ということを言った人であるが、北里は、ばりばりの因果論者であるコッホに傾倒してしまった。北里がペッテンコーフェルに傾倒していたら、その後の日本の医療はずいぶん違ったものだったろう、とのことでした。だから、普段から如何に自然治癒力を高めておくべきか、ということを、日本での西洋医学のベースに据えることもできたはずだったのに、らしい。
そういう100年くらい前に、先人たちがドイツ音楽やドイツ医学のある側面を持ち帰って、20世紀後半になると、世界中に様々な民族音楽があることが当たり前になるように、世界中に様々な民族医療があるということがわかってきます。医療人類学という言葉が存在しないころは、魔法医調査団という名称のもとに、世界各地に行っていたらしいです。
それから、医者と患者がいて、医者が治療をし、患者は治療されるのではなく、(共同作曲みたいな感じで)医者と患者が共同で治療する、もっと言えば、患者が自分で自分を治療するのを、医者がサポートする、そういう医療の形にシフトしていく時代にあるというわけです。
それから、西洋医学は、複雑な症状を単純化して、単純な因果関係ですべてを説明していこうとする。しかし、症状は個人差、環境の違いなど、一つとして同じ症状はなくって、複雑なわけです。その複雑なものを複雑なまま付き合っていく医療。西洋音楽の楽譜も、2進法のシステムを使ってすべてのリズムを表し、2の12乗根を使って平均律という音階を作ったりして、非常に単純化されて、それは本当によく出来たシステムです。しかし、演奏する人の個性によって、この音は、フォルテになったりピアノになったりしちゃうような非常に解読が困難な楽譜があってもいいのかもしれない。ホメオパシーのレメディーを選ぶように、楽譜を解読していく。Homeopathic Musicというものがあってもいいかもしれない。
いろいろ面白いお話ができました。音楽という領域だけで考えていたら思いもしないことも、医療と音楽を比較することで、いろいろ考えが広がります。今後も、医療のことは気になります。
5月くらいには、雑誌ができあがるそうで、楽しみです。この「地球人」という雑誌、年4冊出るのですが、素晴らしいので、定期購読したいです。お薦めです。