野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

音楽療法という交差点

富山県音楽療法研究会」にて、2日間に渡って、片岡祐介さんと二人で講師をしております。ぼくは、音楽療法とは縁がなかったのですが、片岡祐介さんが音楽療法の仕事に関わったのをきっかけに、二人で音楽療法と即興演奏に関する本を書きました。2004年に発売になって以来、増刷を重ね、現在もユニークな良書として好評で、このように講習会などにもお招きいただいたりしております。ありがたいものです。

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ぼくとしては、「音楽療法」というのは、非常に興味深い分野です。というのは、音楽、心理学、医学、教育、福祉など、複数の分野の人が交わり合う場だからです。音楽家も、医者も、心理学者も、それぞれの立場で音楽療法に関わり、アイディアを出し合い、そこから新しい可能性が開けてくる、そうした広がりを持っていると思います。こうした「音楽療法」を「広義の音楽療法」と呼んでみましょう。「広義の音楽療法」は、複数の分野の人が往来する広場のような広がりを持つでしょう。

現在、一般に「音楽療法」と言う場合は、もっと狭い意味で使われます。それは、音楽、心理学、医療などに関して、総合的に学び、音楽療法の資格を得た者により行われるものです。こちらを「狭義の音楽療法」と便宜上呼んでおきましょう。こちらは、「音楽療法」と、「音楽療法ではないもの」を明確に区別するために、音楽療法をどのように定義すべきか、も頻繁に議論されているようです。

ぼくは、異ジャンルの人々が交わり合う「広義の音楽療法」に、大きな可能性を感じます。そして、「広義の音楽療法」が充実することは、「狭義の音楽療法」の発展にも大きく貢献するように思うのです。そういう意味で、もっともっと、色んな人に音楽療法の窓が開いていくと良いな、と思っております。

さて、どうして、こんなことを長々と書いたか、と言いますと、今日は、音楽療法士だけでなく、研究会の非会員や、その子どもまでもが参加できる「かんたん面白音楽」という講座でした。これは、「広義の音楽療法」の開かれた講習会です。明日は、音楽療法士のための講座「音楽って、即興演奏ってどうやるの」で、研究会の会員のみを対象とした講座なのだそうです。

本日のような「広義の音楽療法」の場としての講習会を、音楽療法研究会が設定していることは、とても良いことだと思いました。そして、片岡+野村の即興演奏から、楽器講座、最後には「フルーツバスケット・オーケストラ」まで、様々な次元で音楽の手法や考え方について、レクチャーしました。そうした場面に、戸惑うどころか大喜びの参加者の表情が、何より嬉しかったです。この風通しの良さを、さらに続けていくことが、音楽療法の未来につながっていくのでは、と感じました。明日も楽しみです。