野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

リュック・フェラーリ

船場アートカフェで、リュック・フェラーリの映画の上映会をやっているので、行って来ました。

フェラーリを知ったのは、10代のころ、松平頼暁さんの「20・5世紀の音楽」という本で、「こんにちは、ごきげんいかが?(Bonjour comment ca va?)」というタイトルを見て、現代音楽で、こんなタイトル見たことないなぁ、と興味を持ったのが、最初です。

それから、名古屋のコンセールマリオンという現代音楽専門のCD屋さんに行ったら、やたらに店員さんがフェラーリマニアで、CDを買いました。で、そのCDは、友人の多くにつまらない、と酷評されました。それは、かなり安易なループする即興と具体音を重ねて遊んでいるだけみたいな曲で、逆に、その軽さは、現代音楽を志向する10代のぼくには、驚きだった覚えがあります。

その後、ジョン・ケージ京都賞受賞で来日する時(1989年)に、大井浩明くんや小林薫さんらと、「ケージバン」というコンサートを開くのですが、その時に、フェラーリの「トートロジー」というシリーズのスコアも演奏曲目の候補にあがったけれど、やはり、周りから、つまらないと酷評されて、没になり、演奏しませんでした。

それから、何年かして、ぼくはpou-fouというバンドのCDのレコーディングエンジニアを担当してくれた人は、矢野顕子のレコーディングなんかもやっている佐藤晴彦さんという人なのですが、この人が、pou-fouの音楽を聴いて、フェラーリ的なコラージュを感じると、言ったのですね。で、佐藤さんの家で、ストラヴィンスキーベートーヴェンが喧嘩するだか合作するだか忘れちゃったけど、ストラトーヴェンという曲を聴いたりしました。かれこれ、15年ほど前のことです。

そんなフェラーリも数年前には来日し、昨年には他界され、今年は、フェラーリの映画が上映されたりしているわけです。東京での上映会は、行こうと思いながら、色んな予定と重なって、全然行けなかったので、大阪での上映は、行こうと思っていたのです。

結局、ぼくがフェラーリから一番受けた影響は、「こんにちは、ごきげんいかが?」というタイトルだったのだ、ということが、映画を見て感じたことです。映画の中にも、フェラーリの日常がありました。バーミンガムのアイコンギャラリーのジョナサン・ワトキンスが「everyday」というタイトルの展覧会のキュレーションをする、あのeverydayです。