野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

あいのてレコーディング

新番組「あいのて」(4月15日から放送、NHK教育テレビの毎週土曜9:00〜9:15、再放送が水曜9:15〜9:30)のオープニング曲、エンディング曲、マーブリングアニメの3曲をレコーディング。NHKの506スタジオにて。

オープニング曲は、あっさりとれました。マーブリングも、すんなりとれました。多重録音で重ねた鍵盤ハーモニカのつば抜きの音は、海の波の音のようで、とても綺麗な音にとれた。エンディング曲は、最初、そこそこの演奏だけど、キュンとなるほどの良さがないので、どうしようかなと考えて、「荒井(良二)さんの絵をイメージしながら演奏してみよう」と提案したら、それまでと全く違った雰囲気のある演奏ができたので、それをOKテイクにした上で、いろいろ重ねてみた。

録音は意外にあっさり終わった。片岡さんも尾引さんもレコーディングが苦手なタイプじゃないようで、安定して力を発揮してくれた。エンジニアの人たちも柔軟・優秀で仕事もしやすかった。

午後は、番組宣伝用の番組「みてみてあいのて」のためのロケで、スタジオの様子を撮影。番組の出演者でもある森迫永衣ちゃんが取材に来た。えいちゃんの「あいのてってどんな番組ですか?」という質問がセリフとしてすごく流暢なんだけど、流暢すぎて「どんな番組か」と尋ねられた気分がしなくって、ぼくは返答に困ってしまった。今となって後悔したのは、あのときに、「どんな番組なんだろう?教えて、って気分で尋ねてね」ということを、ぼくからエイちゃんにリクエストすればよかった、ということ。今度、ああいう状況があったら、自分から提案していきたいな。音楽だと、すぐにこうしたらいいと分かるのだけど、

インタビューの会話ではそれが客観視できなかった。

その後、エイちゃんを交えてのリハーサル風景を撮影。テーブルマーチをエイちゃんに叩いてもらって、さらに、番組のビジョンも見えてきた。

宣伝番組の撮影が終わって、今日録音した3曲のミックス作業。まずは、オープニング曲。手拍子の音質や音量など、微妙なところで凝るのが、ぼくの特徴。いかにもこだわってないさりげない細部に、必要以上にこだわったりする。ただし、こうしたスタジオ作業は時間との戦いでもあるので、即座の決断力と徹底したこだわりと、素早い見切りが必要になる。こうした作業、ぼくすごく好きなんです。レコーディングもミックスも大好き。

エンディング曲のミックス。多重録音で相当重ねたのに、ここも要らない、あそこも要らない、とばさばさと刈り込んでいく。これも決断力です。パリで美容院にいったら、すごいスピードで次々にバサバサはさみをいれられて、あっという間に散髪が終わったのに、すごくいい仕上がりだった。あれも、決断。

エンディング曲は、重ねすぎるとゴージャスな感じになるけど素朴さが減っちゃうので、素朴さを保ちながらも、隠し味に色んな音も混ぜておいた。毎週エンディングで流れるし、その時に画面には荒井良二さんの絵が映っていることだろう。毎週、同じ絵なのに違った形や物語を発見して欲しいし、音楽も毎回同じだけど違った音を発見して欲しいから、素朴さとともに、ちょっとずつ隠し味を入れた。あんまり隠し味を入れるとエンディングとして重くなるので、ちょっとだけですけど。

最後にマーブリングアニメ。これは、アニメの潮永さんともこだわって、本当にいい感じにできたので、4月の放送を皆さんお楽しみに。

ミックス作業が終わりごろに、別の番組の収録を終えたエイちゃんが毛糸や色紙で作ったコンビニ弁当の工作を、わざわざぼくたち音出し隊3人に見せに来てくれた。出演者同士、だんだん仲良くなっていけそうで、3月16日のリハーサル、20日の収録が本当に楽しみです。

長江さんからの第1回、第2回の台本が届いていた。ビデオレターの効果ありで、ぼくの意図をきちんと理解してもらった台本に仕上がっていた。今日の録音のエンジニアの人たちも素晴らしかったし、この「あいのて」チームは、すごくいいチームです。すごい番組になりそうだ。皆さん、お疲れさま。これから、よろしく。

千駄木のアパートに戻る。今日は、美術家の島袋道浩が宿泊。明日の朝の飛行機でベルリンに戻るらしい。一緒に銭湯に行って、布団を並べて語り合いながら寝た。