野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

今朝も八日市リサーチ/15枚のゴングが初めて同時に鳴った

午前中に、八日市のリサーチ。ガチャ・コン音楽祭コーディネーターの野田さん、永尾さんと、八日市駅周辺を散策。Googleマップによれば、駅から鐘鋳の地蔵まで徒歩10分。では、その道中はどのようなものか、実際に歩いてみる。踏切を渡ると、すぐに参道。そのまま吸い込まれるように、松尾神社に立ち寄ったが、ここの庭が現代美術のようにワイルドでカッコいい。島袋道浩キュレーションによる野外展と言われたら、信じてしまいそう。実は、昭和初期に重森三玲が発見した庭園らしい。駅のこんな近くに、こんな場所があるなんて、八日市恐るべし。鐘鋳の地蔵までの道中の景色も楽しく、この散策コースおすすめ。そして、到着してみると、このお地蔵さんも本当にキュート。近くの田園風景などもよく、田んぼの周りも歩いてみた。近隣のご理解を得られれば、こうした風景の中でゴングを聞いてみたくもある。

 

金屋にも再度行ってみた。味わい深い金物屋さん。商店街が運営する太子ホールというホールもある。そして、金念寺を訪ねて、梵鐘を観察すると、長村、黄地〜〜と書いてあったので、金壽堂のある長町で作られたこと、そして、金壽堂カフェを現在運営している黄地さんのご先祖が作られたに違いない。金念寺の調査は来月も引き続き行っていこう。

 

八日市駅の構内も再度下見。『ガチャ・コン音楽祭』と名乗っている以上、近江鉄道との関わりも大切にしたい。八日市駅をうまく活用して、ゴング演奏ができないだろうか?八日市駅は高低差を活かした演奏ができるので、それも面白いかも。

 

近江鉄道で桜川駅まで移動して、あかね文化ホールに行く。”ぐるぐる”の第1回。ゲストは柳沢英輔さん。コロナが流行り出したため体調を崩しての欠席の人が何人か出て、ちょっと心配。

 

ぼくが聞き手となって、柳沢さんに質問をしていく。柳沢さんがベトナムの高原地帯の少数民族の音楽を研究し始めたのは、誰かに勧められたりしたわけではなく、CDで聴いてカッコよくて一目惚れならぬ一聴惚れしたからだ。それでも、知り合いの研究者を頼ってラオスで調査を始めたが、求める音楽とは違い、半ば衝動的にベトナム行きのバスに乗り、無計画のまま20時間以上のバス旅行の挙句、真夜中に見知らぬところで降ろされて、そこから、カタコトで調査を始めて現在に至る。話を聞けば聞くほど、わらしべ長者かと思うような無鉄砲、無計画さで、初志貫徹でベトナム少数民族の音楽の研究を進めていった人。

 

永尾さん、野田さんから”ぐるぐる”の説明。展覧会やコンサートなど結果としての作品を享受するのも面白いが、作品を生み出していくプロセスそのものも同じくらい面白い。今年の『ガチャ・コン音楽祭』でも、10月23日のツアーライブのプログラムを作っていく過程で、滋賀について様々なリサーチをしていくし、アーティストとの対話、地域の人との対話、いろいろなことが起こっていく。”ぐるぐる”は、そうしたプロセスにより積極的に参加していきたい方々のためのプログラム。

 

そして、ベトナムのゴングの演奏体験ワークショップ。ベトナム少数民族ジャライ族のゴングを、外国への持ち出しを特別許可してもらい日本に持ち帰ったもの。実は、15枚あるすべてのゴングが15人により一斉に鳴らされたのは、今日のこの瞬間、日本で初めて起こったことで、これは歴史的瞬間であった。反復して繰り返していくと、どんどんトランス状態に近づいていく。永遠に続けていたいサウンド。この音楽が、東近江の風景の鳴り響くことを想像し、ドキドキする。

 

アンサンブルがうまく進んでいるので、合唱や他の西洋楽器が加わるケースを考えて、テスト的に、鍵盤ハーモニカやピアノで加わってみた。ピアノで加わると、ライヒやライリーのミニマルミュージックを演奏している感覚やテクノを演奏している感覚に近かった。実際に音に出して体感できることも色々あり、収穫大。

 

柳沢さんやゴングバンドの皆さんとも打ち合わせをして、今後の進め方など検討。

 

 

あかね児童合唱団/金屋町リサーチ

滋賀に移動。本日は、あかね児童合唱団とのワークショップ。10月23日のツアーライブに出演していただく。昨年、日野少年少女合唱団に歌ってもらい電車の車内で放送した駅名ソング《豊郷》、《平田》、《スクリーン》、《日野》、《長谷野》を、今年は生演奏で歌っていただく。昨年と違う合唱団が歌ってくれるのも新鮮。2回の練習を経て、すでにとてもいい感じ。

 

続いて、昨年、岡田健太郎さんとのワークショップで作った《朝日野》をバージョンアップするのが、今回の一番の目的。子どもたちに竹田神社と朝日野駅について質問し、歌詞を考える。その後、メロディーも考えて、2022年バージョンの《朝日野》のスケッチ完了。近々、ぼくが児童合唱用に編曲。

 

で、当初の計画ではここまでだったのだが、ベトナムのゴングと児童合唱の合体もやってみたかったので、ベトナムの伝統曲のメロディーに当てはまる歌詞を考えた。ベトナムの音楽なのに、なぜか75調が合う。あかね児童合唱団の「あかね」の由来となっている額田王万葉集の和歌

 

あかねさす むさらきのゆき しめのゆき のもりはみずや きみがそでふる

 

を歌ってみた。近江鉄道の「あかね号」も、この和歌に由来するものだろう。額田王のいた飛鳥時代に、大陸から伝来した梵鐘や鋳物の技術が滋賀に残り、そのことを思いながら、ベトナムのゴングを奏でる企画を考えたのだが、そこに飛鳥時代の和歌が重なってくる。歌垣について、改めて考えたくなった。

 

打ち合わせの後、八日市へ移動。八日市の金屋町を散策してリサーチしてみた。滋賀の鋳物師について調べている中で、金屋町という地名も鋳物が由来とあったので、まずは歩いてみようと思った。すると、金念寺というお寺があった。名前からして「金」だ。このお寺には梵鐘もあり、江州音頭の碑もある。お寺のすぐ側にある灯籠に、「金壽組」と書かれていた。梵鐘工場の「金壽堂」とそっくりな名前。何か関係があるのだろうか?その後も金屋町を散策。野々宮神社にも参詣。その向かいに図書館があり、東近江江州音頭会館の入った建物もあった。どちらも閉館時刻を過ぎているので、中には入れず。

 

本町商店街のお祭りのようで、すごい人混み。藤野さんの共同アトリエsoilでお会いした大道芸の丸ちぇろさんの実演もあり、偶然、県の近江鉄道担当の谷さんにもバッタリお会いしたりした。

 

ガチャ・コン音楽祭打ち合わせ/春日50

びわ湖・アーティスツ・みんぐる2022『ガチャ・コン音楽祭Vol.2』の打ち合わせ。アーティスト/研究者の柳沢さん、コーディネーターの野田さん、永尾さん、財団の福本さん、山元さんと。明後日に開催の今年度の”ぐるぐる”第1回「フィールドレコーディングの世界」に向けての打ち合わせ。まずは、方向性の確認。「フィールドレコーディング」について講義するのではなく、「フィールドレコーディング」というキーワードを通して、柳沢さんの特長が浮き彫りになることを目指したい。「フィールドレコーディング」とは何かの概説ではなく、「柳沢英輔とは何者か?」についてのクロストーク。その上で、柳沢さんと東近江を如何に出会わせることができるか?どんな相互作用が起こり得るか?そのために、どんな仕掛けをしていくか?そんなことを考えていくきっかけにしたい。

 

また、明後日は、貴重なベトナムのゴングセットをお持ちいただき、ゴング体験をする。10月23日のツアーライブで、ベトナムのゴングで何をするのか、それぞれの演目は何人で演奏するのか、などなどを確定させていきたいので、10月23日のツアーライブの全体のプログラム案を野村が明後日までに書くことに。ということで、その後は、ツアー案の詳細の部分を考えていて、Googleマップで東近江の地図を見続ける一日だった。

 

先週末の春日でのワークショップに基づく50曲のうちの最初の数曲の作曲に着手しようと始めたが、合計6時間分のワークショップの動画の中に、50曲のアイディアが点在しているので、どこにどのアイディアがあるのかを整理しないと何がなんだか分からなくなるので、今日は、低学年のワークショップの動画を見直した。

 

世界のしょうない音楽祭に向けて

世界のしょうない音楽祭+ワークショップの打ち合わせ。豊中市、日本センチュリー交響楽団大阪音大で。今年度のスケジュール、会場の調整など。関係する人が多く、なかなか大変。全て対面で行いたいところではあるが、コロナも増えてきていて、今年度のワークショップも、リモートと対面の混合で行う方向になった。リモートになると、庄内という地域への意識が薄れてしまう懸念があるので、庄内で撮影した写真や動画を入れていくなど、ワークショップの中で何らかの形で庄内を入れていきたい。昨年度は、箏にフォーカスが当たったので、今年度は西洋楽器に焦点を当てたいとのことで、ヴァイオリンやチェロなどのオーケストラの弦楽器に、古楽器ヴィオラ・ダ・ガンバも体験できる形にしたい。

 

こちらは一昨年の動画。昨年度の動画も近々公開になる予定。

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世界のしょうない音楽祭に向けて

世界のしょうない音楽祭+ワークショップの打ち合わせ。豊中市、日本センチュリー交響楽団大阪音大で。今年度のスケジュール、会場の調整など。関係する人が多く、なかなか大変。全て対面で行いたいところではあるが、コロナも増えてきていて、今年度のワークショップも、リモートと対面の混合で行う方向になった。リモートになると、庄内という地域への意識が薄れてしまう懸念があるので、庄内で撮影した写真や動画を入れていくなど、ワークショップの中で何らかの形で庄内を入れていきたい。昨年度は、箏にフォーカスが当たったので、今年度は西洋楽器に焦点を当てたいとのことで、ヴァイオリンやチェロなどのオーケストラの弦楽器に、古楽器ヴィオラ・ダ・ガンバも体験できる形にしたい。

 

こちらは一昨年の動画。昨年度の動画も近々公開になる予定。

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問題行動トリオ/山城大督さんの映像

十和田市現代美術館から、5月の問題行動トリオの公演《ビジュツセッシュ》と《トワダノワダイ》の記録映像が届くのでチェック。2ヶ月前だが、懐かしい。

 

山城大督さんから電話。映像に音をつける件。これまで、ぼくが関わるプロジェクトを山城さんに撮影していただくことはあったし、トークでご一緒したこともあったが、山城さんの映像に音楽をつけるのは、初めて。楽しみ。

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都城相撲甚句リサーチ

都城に日帰り相撲リサーチ。新八代駅から宮崎への高速バスがあり、乗ったら1時間半ほどで、都城北に着く。そこからタクシーで、庄内地区公民館へ。早めに着いたので、公民館の書棚で都城市史を読むと、相撲甚句のページがあるので、予習。

 

宮崎県立劇場の工藤さん、児島さん、プロデューサーの小田さん、相撲探求家の一ノ矢さん、打楽器奏者の神田さんと合流。その後、場所が違うことが判明し、庄内町区公民館へ移動。町区相撲甚句踊り保存会の方々と出会う。扇風機が数台まわりまくっていて、壁には賞状や記念写真の額が多数掲げてあり、さいたまの岩槻で古式土俵入りを取材した時の光景にそっくり。JACSHAの鶴見さん、樅山さん、三味線の竹澤さんなどもzoomでリモート参加。

 

女性だけが踊る相撲甚句で、この地区に嫁入りすると、みな相撲甚句踊りをやった。だから60年くらい前から、踊り続けておられる方々なので、コロナで2年間練習もしていなかったと言っても、体が覚えている。堂々とした構えもさすが。歌、三味線、太鼓、拍子木が使用する楽器。昔は、歌は歌で専属だったのが、人員不足で三味線を弾きながら歌っている。竹野相撲甚句のメロディーに似ている。

 

午後は、谷頭相撲甚句踊り保存会の方々。ここでは、MJホールの方々とも再会。こちらも扇風機がいっぱいの公民館で、衣装をつけて待っておられた。踊り手も10人近くいて、歌も二人、太鼓も二人、三味線一人、拍子木一人の大所帯。この地域だけでは人員不足のため、エリアを拡大してメンバーを集めているので、始めてから3年程度の人が多く、午前中が50年の経験者たちの選抜チームとすれば、こちらは経験が浅いが人数が多い楽しい集い。全く違うアプローチなので、それぞれの個性に出会えてよかった。お話の中で、子どもの頃、十五夜の日に綱引きをするために藁で縄を編み、綱引きの後、土俵を作って相撲をした話を伺った。塔本シスコの絵に描かれた光景とそっくりで、感激した。

 

車で15分ほどしか離れていない2地区にある相撲甚句踊りなので、もっと似ているのかと思ったが、音楽も踊りも全然違った。

 

宮崎から都城に嫁入りされたという方は、宮崎では、木花相撲踊りがあったので、相撲甚句は知っていた、とのこと。

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