野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

Dr. Melodicaとの鍵盤ハーモニカの旅day2

Dr. Melodicaの屋号で活動するDavid Brancazioとの鍵盤ハーモニカ探求の旅2日目。アメリカではストリートバンドが盛んで、ピアノはストリートに持ち運びができないので、鍵盤ハーモニカを始めたそうだ。そして、本職がメカニック・エンジニアなので、鍵盤ハーモニカの楽器としての不備を、自分で改良していこうと考えた、と言う。

 

野外で演奏すると、鍵盤ハーモニカは音量が出ない。しかし、いくら息を強く吹いても、楽器の性能が不十分で、息の一部がロスしてしまう。もっと効率よく楽器を鳴らす仕組みが作れないか、とディビッドは考えた。彼の考えた楽器の修正プランはいくつもある。それらは非常にシンプルなので、少しのお金さえあれば、楽器を試作したりできる。しかし、現実には楽器メイカーは商売をしているので、なかなかそうしたモデルを試作することに協力してくれない。これは、未来のピアノを模索する調律師上野泰永さんとの話とも共通する話。技術者の視点から出てくる楽器改良案を、もっと実験できる場を作っていくことは、音楽の発展のためには必要なことなのだが、、、、。

 

ディヴィッドと大垣に行く。小瀬泉さんとIAMASへ行き、ガムランを見学し、実際に演奏にも参加して後、IAMASの大学院生たちと情報交換をする。Davidの鍵盤ハーモニカの湿度除去システムのプレゼンに対して、院生たちが取り組んでいるプロジェクトの紹介もあり、テクノロジーとアートの交差点での交流。MIT出身のDavidは、IAMASはMITのようだ、と喜ぶ。

 

岐阜のSlow Roomでライブ。小瀬さんのオーガナイズで、前半がIAMASの兒島朋笑さんによるパフォーマンス。YouTubeで公開されている動画をサンプルしてミックスしてループしていくような即興だが、観客にもスマホYouTubeの音源を流すように求める参加型作品で、とても良い感覚のパフォーマンスだった。

 

後半は、導入に野村の《鍵盤ハーモニカ・イントロダクション》から始め、続いてディヴィッドは観客からリクエストを受けた3曲を鍵盤ハーモニカソロで演奏。小瀬さんのソロは、鍵盤ハーモニカのホースだけを使って観客とアイコンタクトをするパフォーマンス。3人でのトリオの即興セッションで様々な響きを楽しんだ後、朋笑さんのパフォーマンスに捧げる意味で、観客にその場でスマホで録音し再生してもらいながらの観客参加型のケンハモオーケストラ。3人の生鍵盤ハーモニカ+録音された鍵盤ハーモニカが重なり合う。

 

鍵盤ハーモニカで小瀬さんと共演するのは、ベルリン以来で16年ぶり。奇跡のような時間だった。