ディレクターとして関わっている『ガチャ・コン音楽祭Vol.2』が快晴で、無事終演。出演者、関係者、ご来場のみなさまに、本当にありがとう(東京、愛知、熊本など、遠方からのご参加も)。以下、長文だけど、本日のぼく視点でのレポート。
1)午前中のリハ@竹田神社
ホテルから大井卓也さんと車で移動。夜中に雨降ったみたいだけど、快晴。よしっ!!!朝は竹田神社。とりあえず、本殿にお参りして、本日の成功と事故がないことをお願いする。梵鐘に関係のある離れた3会場で実施で、電車やバスで移動しなければならない。だから、スタッフや出演者が3ヶ所に別々に配置されている。にも関わらず、全出演者が一堂に会するというフィナーレをやることにしてしまった。だから、今朝は、12:40に開演する第1鐘の出演者も、13:20に開演する第2鐘も集合。全出演者による30分だけの最初で最後のリハーサル。listude(a.k.a. sonihouse)の十二面体スピーカーによる音響が瞬時にナチュラルないい音でバラバラの音を溶け合わせていく。竹田神社の境内をGacha Gong Bandが移動していく。神社の空間に見事な馴染み方。あかね児童合唱団が、半野外の能舞台でしっかり歌われる。啓さんのヴァイオリンは、さすがに歌ものも多く経験があるので、歌を邪魔しないのに存在感をしっかり示すアドリブ。谷口さんの声が神社に風のように吹き抜ける。出演者総勢40名を超えるので、大混乱に陥ってもおかしくないが、舞台監督の浦川さんが笑顔で誘導してくれるので安心。手応え十分のリハーサルを終えて、第1鐘、第2鐘の出演者は、それぞれの持ち場に向かう。第3鐘の出演者は、これから出番までの3時間半の間に、練習したり場当たりしたり、交流することだろう。きっと、さらに一段あがった演奏になって本番に会えるだろう。ぼくも、谷口さんや財団の福本さんらと第1鐘の会場に移動。
2)第1鐘@金念寺
コーディネータの野田さん、永尾さん他、スタッフの皆さんが受付待機中。お寺では法事が行われているので、静かに待つ。法事も終わり、『ガチャ・コン音楽祭』のお客さんが徐々に集まってきて、くつろぎながら、ブックレットを読みながら待つ。電車やバスでの移動も多く、移動の間に手に取って読めるガイドブックは、非常に充実した内容とデザイン。福本さんの注意事項の説明の後、ぼくも少しだけ話す。この後に乗るバスの乗車場所が予定よりも遠くなったため、あまり説明している時間がとれない。梵鐘づくりの仕事歌『たたら節』は、梵鐘工場で作業中に歌われる歌で、完成した梵鐘は、この歌を二度と聞くことはないだろう。しかし、今日、梵鐘の側で谷口未知さんがアカペラで歌った。梵鐘にとっては、生まれる前の胎内で聞いた歌と久しぶりに遭遇したような気持ちだったかもしれない。また、力仕事をしながら歌う歌が、谷口さんのやさしい歌声で響くと、風とともに遠くの故郷である梵鐘工場を思い出すかのような気持ちになったかもしれない。リクエストコーナーを交えて、最後には、ぼくが鐘を撞いた。
梵鐘づくりの仕事歌が、谷口未知さんの囁くような歌声で美しく現代に蘇ったことは感無量。梵鐘づくりの伝統的製法が途絶えることで、仕事歌である「たたら節」が歌われる機会も必然的に途絶える。風のように歌声が青空に解き放たれていった。
3)第2鐘@金壽堂
バスに乗り、田園風景が広がる「長(おさ)」への旅。旧梵鐘工場に着く。地元の方々はすでに着席されて待っておられた。山本啓さん(ヴァイオリン)と野村誠(ピアノ)のデュオ。ここで作られた梵鐘の音が里帰りしてくる作品。滋賀県内16ヶ所を巡って収録した鐘の音が流れ、鐘の音に反応するように照明が変化する。鐘の音にエフェクトがかかり変調されていく。鐘の響きとピアノの響き。そこにヴァイオリンがメロディーになる前のようなメロディーを、波が打ち寄せては消えていくように奏でる。2曲目は、梵鐘のピッチに合わせてコードが変わっていくアンビエントな曲。タイトルは《iru》で、「鋳る」であり「居る」であるそうだ。事前に作られた音源に合わせて演奏なので、その鋳型に合わせての演奏になるが、しかし、鋳型に生演奏の醍醐味は鋳型にはまりつつもライブ感覚をつくること。生きた躍動感を失わずの演奏を心がける。演奏中に梵鐘の音と連動して照明が変化したが、それは無機質な光と音の物理的な連動という感じではなく、何か里帰りして浮遊している目に見えない梵鐘の魂が表現されているかのよう。音楽と陸上競技と料理が等価に繋がっている山本啓の今後の展開にも要注目。最後は、梵鐘の音なしで、二人で「ふるさと」を演奏。こちらも、「ふるさと」という鋳型があるからこそ、自由に色々な形になって奔放に遊ぶ子どものように演奏。時間になると鐘が鳴り、遊びの時間が終了。まさに「時の鐘」。次の会場へ。
4)西田さんのバスガイド
バスで移動中に、ぐるぐるメンバーの西田さんが、地元について次々にガイドをしてくださる。これは全くプランになかったが、西田さん自らの発案で、突如、即興的に始まった。昨年度の企画の際、桜川駅について説明していただいた方で、昨年は駅長のコスプレまでしてガイドしていただいた。郷土に愛のあるお方で、何の準備もしていないのに、蛇溝、長谷野、布施場、大学前駅、何でも説明できてしまう。
5)トイレ休憩@大学前駅
大学前駅から近江鉄道に乗車なのだが、びわ湖学院大学のトイレを使わせていただくことにしていた。野外移動ツアーで、ここがベストのトイレ休憩で、電車に乗車の前にトイレ休憩の時間がとれるかどうかが、本日の1番の難所だったが、ここもトラブルなく乗車。びわ湖学院大学の職員さんが丁寧に対応してくださり、会釈でお別れ。
6)近江鉄道
7)第3鐘ー1 仙遊社@竹田神社能舞台
ついに、朝日野駅に到着。竹田神社に向かって歩く。ツアーの参加者は首からチケットを下げている。チケットを下げていない親子も竹田神社に向かっている。各会場、鑑賞を希望される地元の方に入場整理券が発行されている。続々と神社に人が集まっていく。音がするはずではないのに、境内から音がする。3時間の間に、Gacha Gong Bandが歓迎の演奏をすることに変更になったらしい。音楽でのお出迎えは、とてもいい。会場は、既に地元の方々も数多く集まっておられて、なかなかの賑わい。15時定刻に開演。雅楽の仙遊社の演奏。篳篥2、龍笛2、笙2、太鼓1の7人。装束を着て椅子に座って演奏で古の雰囲気たっぷりだが、各自の前に譜面台が置いてあるのが意外で面白い。ご高齢の方々が多いが、しっかり音量も出ていて、これだけの呼吸をしていたら健康にもいいに違いない。せっかく雅楽が地域で伝承されているので、子どもたちや若い人でやる人が出てくるといいなぁ、などと思う。味わい深い音で、会場が和むと同時に、清められる時間となった。
8)第3鐘ー2 あかね児童合唱団@竹田神社能舞台
あかね児童合唱団が、近江鉄道の駅名ソング5曲を歌う。ツアーのお客さんは拝殿に客席、地元のお客さんは側面と座席が指定になっていて、子どもたちの姿は、ツアーのお客さんには正面なのだが、地元のお客さんには横向きで顔があまり見えにくいに、声も直接は、こちらには向いてこない。それは、一瞬残念なことのように思えたが、横から見るからこそ指揮の大橋先生が色々な表情で子どもたちの表現を引き出そうとされているのが、見られて、得した気分になった。
9)第3鐘ー3 Gacha Gong Band@竹田神社境内
ついに柳沢英輔さん率いるGacha Gong Bandの演奏になった。演奏されている楽器は、めちゃくちゃ貴重なもので、柳沢さんが長年ベトナムの少数民族の音楽をフィールド調査し、現地の方と親子の契りを結んだ上で特別に国外持ち出しを許可された200年前の楽器。これを16人編成のフルバージョンで今回のために結成されたGacha Gong Bandが奏でるが、これが圧巻。中部ベトナムの少数民族の音楽が、演奏しながら徐々に近づいてきて、拝殿の周囲を3周する。ベトナムに行かなければ決して聞けない音楽、いやベトナムに行ったって滅多に聞けない超レアな音楽が演奏されている。拝殿で聴いたお客さんは、音像が移動していくのも楽しかったに違いない。この間、能舞台上では、谷口さん、啓さんのマイクセッティング。ぼくは足袋を着用し、鏡の間でフライヤーで作成したお面をつけて、ささやかな変身をする。ゴングの退場に合わせて、橋掛かりを通って能舞台に進む。
10)第3鐘ー4 全員@竹田神社能舞台+境内
ぼくは小さい梵鐘を鳴らしながら、合唱団に開始の合図を送る。《あかねさす》が始まる。子どもたちの歌声、美しい。ぼくがフライヤーのお面をつけて動いても、子どもたちは動じることもなく、しっかり歌い続けてくれた。谷口さんの歌が加わる。たたら節が風を送ってくれる。滋賀のアートの炎に風を送ってくれる。啓さんのヴァイオリンが、歌を決して邪魔しないけれども、確かな存在感で鳴り響く。梵鐘の録音がフェイドインしてくる。ベトナムのゴングが即興で加わり、徐々に《Ma Chay》になっていく。ぼくは、ゴングと合唱のテンポを共有すべく、鈴を振ってテンポを示す。と同時に、この鈴は、能『三番叟 鈴之段』の鈴でもある。滋賀に文化の種を撒く鈴であり、厄を払う鈴である。ぼくは能舞台を踏みしめ、悪霊を鎮め様々な祈りを込めて鈴を振って舞いながら、雅楽に合図を送り、鍵盤ハーモニカを手に取る。雅楽の笙の響きと他の楽器をつなぐ役割としての鍵盤ハーモニカ。雅楽が加わり、美しいカオスの中で、梵鐘の音も最大に鳴っていて、一瞬の狂乱の響きがフェイドアウトしていって、終演となる。演奏者を全員紹介。(Gacha Gong Bandを紹介したが、柳沢さん個人を紹介できなかったことが悔いが残る)。
11)もう一つのフィナーレ
しかし、ここで終わったように思えて、実は、最後に電車で出発するお客さんをゴングの演奏で見送るのが、プログラムに記載されていないもう一つのフィナーレ。神社の参道でGacha Gong Bandが演奏し続ける中、お客さんが少しずつ朝日野駅に歩いていく。電車が到着する間際には、駅から奏者に手を振る人々の姿がある。電車が到着する時に奇跡が起きた。雲に入っていた夕陽が、突然、雲から出てきたのだ。まさに「あかねさす」で、近江鉄道の列車とGacha Gong Bandに、線で描いたような光が差し込んできた。奇跡だ。電車が発車する。合唱団の子どもたちも電車に向かって手を振っている。短い時間だったけど、ぼくらは一緒にベトナムに行って、それぞれの日常に帰って行く。ツアーライブは、異なった会場を巡る旅のようであるが、いつの間にか異界に旅して、いつの間にか日常に帰ってくる。そんな旅だった。
12)余韻
以上が、ぼくの『ガチャ・コン音楽祭Vol.2』で、その後、記念撮影や挨拶などを経て、映像撮影の山城さんの運転する車の中でも熱く語り、熊本へ帰る新幹線の中でも里村さんと熱く語って、日常の世界に戻る。でも、まだ鐘が響いている。今日のイベントは、梵鐘のアタック音に過ぎない。鐘を撞いても、余韻が長く続く。今日の余韻が、ぼくの身体の中で、ぐぅーわーんぅわーんぅわーんぅわーんぅわーんと、響き続ける。このことが、ぼくたちの明日からに続いていく。だから、この余韻を感じながら、明日から生きていきたいと思った。
3会場に分かれてるし、コロナだし、打ち上げできないの本当に残念。みなさん、本当にありがとう!!!!!。おつかれさまーーー!!!!!。コーディネーターの永尾さんと野田さん、財団の福本さん、山元さんをはじめとした一緒に作ってきた仲間たち。本当にありがとう+おつかれさま。”ぐるぐる”の皆さんも、それぞれの持ち場だったから十分にお礼言えなかったけど、ありがとう。舞台監督の浦川さんの笑顔の交通整理、竹田神社の音響のlistudeの鶴林ご夫妻の見事な音作り、会場の金念寺、金壽堂、竹田神社の方々、本当に多大なご協力、ありがとうございます!!!出演者の皆さんの熱演、ありがとう。観客の皆さん、足をお運びくださり、この狂気の催しに立ち会ってくださり、ありがとう。みなさま、本当に、ありがとうございました。