野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

作曲中、野坂恵子先生へ

山本亜美さんのために25絃の作品を書く。昨日までは、戸島美喜夫の作品を見ていた。亜美さんは、戸島先生とお会いした時に、戸島先生がぼくのことを何度も語ってくれたことから、戸島先生のお宅で開催するホームコンサートに招待したいと、突然連絡をとってきた人だ。戸島先生の体調が悪化して、ホームコンサートは実現せず、戸島先生は帰らぬ人となった。その年に、ぼくは《世界をしずめる 踏歌 戸島美喜夫へ》という曲を書いた。

 

その後、亜美さんから相談を受けたのは、《木のみちしるべ》の編曲についてだった。亜美さんはこのマリンバソロの楽譜を戸島先生から託され、好きにアレンジしてやっていい、と言われたらしい。最初の依頼は編曲だったが、やっぱり作曲してほしい、と新曲の委嘱となった。

 

《木のみちしるべ》はマリンバのために書かれた曲で、25絃で弾くのに適している曲とも思わない。戸島先生は、どうして、この楽譜を編みさんに託したのだろう?25絃にアレンジする上で、大幅に曲を改変することになるだろう。だから、亜美さんからの依頼内容も途中で変わったのかもしれない。

 

では、《木のみちしるべ》を踏まえて、どんな曲を書くのか。タンザニア、トルコ、ノルウェイ、沖縄などの音楽に基づいた作品だから、ぼくも戸島先生にならって、世界に色々な音楽を自分なりに集めてみるか?そんな表面的な模倣をしても違う気がする。それよりも、戸島先生の音楽の自由さに触発されて、ぼく自身が自由に作曲することの方が、戸島作品に向き合ったもののとるべき態度だろうと思う。

 

と同時に、もう一人の重要な故人、野坂恵子先生が考案された25絃という楽器に向き合って、作曲したいと思う。ぼくは、《木のみちしるべ》の冒頭1小節目を起点に、新曲のスケッチを始めた。自分なりに25絃という楽器に向き合うつもりで。竹澤悦子さんとやった門天でのライブを、野坂先生が聴きに来てくださった。野坂先生の生み出された楽器を、亜美さんが膨らませていこうとしている。そこに自分なりに貢献するために、自由でありたいと思う。

 

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