野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

デスクワークの日々 相撲甚句と盆踊り

本日は、大阪の四天王寺聖霊会で、昔から噂に聞いて、なんとか都合が合う時は行きたいと思いながら、チャンスを逃していて、今年こそ見に行きたかったが、新型コロナウイルスにより、無参拝者法要となったとのこと。来年あたりに行けるといいなぁ。

 

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外に出かけるフィールドワークと、机に向かってするデスクワーク。ぼくの仕事は、この二つが組み合わさっていることが多い。旅に出たり、人々と交流していくこと、創作のための取材(リサーチ)をすることなどがフィールドワークだとしたら、そうしたフィールドワークでの体験を自宅で机に向かって整理したり、文章を書いたり、譜面を書いたりする作業がデスクワーク。今は、もっぱらデスクワークに集中できる時である。

 

相撲と音楽に関する本を書きたいと、JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)で言い続けてきたので、全然進んでいない。これはいい機会だ、と思うので、資料を引っ張りだしてきて、まとめ始める。まずは、2014年にやった「相撲甚句」のワークショップの資料から手をつける。「相撲甚句」の説明、「甚句」の説明を整理しようと思って、wikipediaで見たり、「相撲大事典」で調べてみたりすると、おかしなことになる。これらをみると、甚句というのは、7775調で、相撲甚句もその形式だと書いてある。ところが、相撲甚句は、75757575と続く75調で、7775調にはなっていない。

 

さらには、「相撲甚句」が入っている民俗芸能を調べると、踊りがついていることが多く、相撲甚句が盆踊りと融合している。相撲甚句では、前唄、甚句、後唄などの構成になっているが、この前唄のことを「一つ拍子」、それ以外を「三つ拍子」という祭りがあったりする。相撲甚句と関係なく盆踊りで「三つ拍子」という踊りがある地域が、実はたくさんある。相撲甚句と盆踊りの関係。

 

さらには、「相撲甚句」では、最後に「はー、どすこい、どすこい」と言う。この相撲の代名詞のように一般に認知されている「ドスコイ」は、実は大相撲では、相撲甚句以外で使うことはないそうだ。このドスコイは、名古屋甚句などでは、「トコ、ドッコイしょー」などと言うので、「どっこい」が訛ったものかもしれない。

 

などなど、相撲甚句を題材にするだけで、調べたいこと、気になることが次々に出てくる。今年の10月に城崎国際アートセンターで滞在制作する時には、竹野相撲甚句金管バンドにアレンジして、小学生とコラボレーションしたいと考えているが、竹野でのフィールドワークが開始できる時が来る日を楽しみに、今はデスクワークの時期と考えて、相撲甚句の謎をいっぱい調べておきたい。

 

読書も楽しくしているが、柿沼敏江著「〈無調〉の誕生」(音楽之友社)を読了。12音技法を考案したシェーンベルクとハウアーが、それぞれ如何に調性的な音楽を書いていたかから始まり、ナチスと無調と作曲家の姿勢などを経て、第2次世界大戦後のダルムシュタットのサマーセミナーの考察、メシアンの移調の限られた旋法の第2番や、スペクトル楽派、ハリー・パーチやジェイムス・テニーなどの音律と倍音の話などを経て、最後に、時間の話が出てきて、20世紀の作曲家がいかにシャコンヌパッサカリアという古典的な形式を再利用したかの話になる。読みやすく明快な論で、ワクワクしながら読んだ。そして、こうして、読んでいる今、20世紀にホルストが書いた「吹奏楽のための第1組曲」の1曲目の「シャコンヌ」を編曲していたので、柿沼さんの本の最終章とリンクして、面白かった。まもなく、この「シャコンヌ」の編曲が終わるので、そのあとは、ホルストの「シャコンヌ」の主題に基づく野村のシャコンヌを作曲しようと思っている。

 

ぬかどこは十分発酵し、昨日あたりからぬか漬けが食べられるようになった。庭のミニ農園化は順調に進んでおり、これだけ在宅だったら、野菜も育てられるし、ぬか漬けもできる。アップリンクの60本映画を見られるサービスのおかげで、相変わらず自宅での映画上映を毎日やっていて、昨日はフラメンコダンサーのドキュメンタリー映画、一昨日は、インドで誰にでも無料で食事を振る舞い1日に10万食を振る舞う無料食堂のドキュメンタリー映画、その前はフィンランドの核廃棄物処理場ドキュメンタリー映画を見た。これだけ旅をしないと、映画でフィンランド、スペイン、インドとバーチャルに旅できるのは有難い。そして、2980円で60本も自宅で映画を見られたら、コロナ後に映画館に行かないかと言えばそんなわけはなく、こうして今、連日自宅で映画を見ているからこそ、コロナ後には、映画館にいっぱい行きたいと思う。