野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

健康診断や中国太鼓

今日は、香港の都心のセントラル(中環)駅で、ベリーニと待ち合わせ。朝8時25分頃に、JCRCを出ると、駅から、続々と職員が歩いてくる。プリスカに会い、メーリンに会い、みんなと次々にすれ違って、駅に行く。みんな定時に出勤しているんだなぁ。

ぼくはMTRを乗り継ぎ、駅でベリーニと落ち合う。彼女が調べてくれた換金率が一番いい両替所で、ぼくの現金(ユーロ)を香港ドルに換金する。1ヶ月ごとに謝金が支払われるので、とりあえず、今は自分のお金で生活しなければいけない。通常は、謝金は後で払われるとしても、日当を最初にもらえるので、換金しなくて済むのだが、今回は、2食つきだけれども、日当はない。ということで、晴れて現金を持っている生活になった。

路面電車の乗り方を覚えた方がいい、とベリーニ。健康診断に行くのに、路面電車で行く。2階建てで、ちょっとロンドンのバスみたいで、2階からの光景は、ロンドンの中華街の近く、レスタースクエアかどこかを走っているような気分にもなった。

温水プールでワークショップを行うために、規則に基づき、身体検査。レントゲン撮影と、血液検査を受けた。通常、めんどくさく感じる健康診断も香港で経験できると、イベント感が出ていい。

その後は、ベリーニが、歩いて色々案内してくれて、特にガード下で行われている占い風の儀式が面白かった。どうも、気に入らない人への恨みや鬱憤を晴らすためのものみたいで、こうして気持ちが発散できる仕組みがあるのは、いいな、と思ったし、ある種のカウンセリングでもあるのだろう。

ベリーニたちは、来年、香港でインクルーシブ・アートの国際会議をするつもりらしい。また、来年も香港に来れそうだ。ランチは、香港のベジタリアンレストラン初体験。その後、市場で野菜や果物、さらには、手作り豆乳も見つけて購入。楽しい町歩きを終えて、バスでトンネルを抜けて、JCRCに戻る。

午後のアートクラスを見学後、窓際で様々な種子を水栽培し始めたアートの先生に、これ何してるの?と尋ねると、実は、ぼくもわかんないんだよ、と言う。彼は、ここで5、6年前から教えているらしく、以前は、プロダクトデザイナーをしていて、今は、ここ以外にも、精神障がいの人とか、特別支援学校の子どもとか、高齢者とかに、美術を教えているらしい。ここの施設の人が、なかなか施設の外に出たり、遠出する機会がないだろうからと、土で絵を描こうと思って、土を採ってきたり、種を育ててみたりしている。でも、それで何をするのかのゴールは分からない。道筋を決めて教えるよりも、何か刺激を与えた上で、どう展開するかに立ち合う方がいい。彼は、小声で決して流暢ではない英語で、一生懸命話してくれた。感謝だ。

娯楽室では、いつもは麻雀が盛んなのに、今日は料理をしている。お料理教室の日なのだそうだ。みんな楽しそう。しばらくすると、ぼくの部屋にノックがあって、チキンが届けられた。ベジタリアンのランチだったのが、予想外のチキンのおやつ。ということで、娯楽室に行き、チキンをともにする。

事務所に行く。ベリーニが、神戸の「音遊びの会」って知ってる?と聞いてくる。もちろん、知っている。i-dArtの人たちが、日本の人とコラボレートできる機会をつくれると、いいなぁ、と思う。ベリーニが、これ見たことある?と「1万人のゴールドシアター2016金色交響曲」のDVDを渡してくる。ぼくらが、さいたまトリエンナーレ2016をやっていた頃の埼玉での高齢者演劇公演。話は聞いていたけれども、見たことはない。香港の人々は、日本の事例をよく勉強している。

外から大きな太鼓の音が聞こえてきたので、きっとホールで中国太鼓をやっているのだろう、と思って、すぐに行く。主に、高齢者の人々が、中国太鼓をやっている。男性10人、女性3人。太鼓は男性に人気なのだろうか?ヘルパーさんが3人。みんなで、それぞれのリズムパターンは単純なのだが、覚えるのは難しいだろう、かなり長いフレーズを、ユニゾンで演奏。確かに、リハビリの運動としても、いろいろな腕の動きも効果があるのだろう?直径50センチほどの太鼓で低音がしっかり出て、皮の張りがゆるいのか高音がきつくないので、20人ほどでの太鼓のユニゾンは、耳にやさしく心地よい。

その後、ついに洗濯機と乾燥機の使い方を教わり、使って良い日が週2日決まったので、1週間ぶりに洗濯が実現し、感激。その後、日本にいる門限ズのメンバーとネット通話で会議。1週間ぶりに、日本語をたくさん喋った。会議が終わって、この日記をアップしようとしたところで、洗濯物を回収していないのに気づいて、大慌てでとりに行く。