野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

Homage to Lou Harrison - Quartet for violin and Balinese gamelan

今年も残りわずかになってまいりました。今年の元日は、インドネシア(ジャワ島のジョグジャカルタ)におりまして、教会でガムラン伴奏による賛美歌を聴くことで幕を開けました。今年も残り3日となりましたが、今年の最後に大阪のバリガムランGita Kencanaのスタジオにお邪魔しております。野村の新曲「Homage to Lou Harrison -Quartet for violin and Balinese gamelan」のリハーサルに立ち合うためです。

レヨンという鍋を逆さまにしたような楽器が横一列に10個並んでいると、見るだけで壮観です。そして、ジュブラッグという重厚な鉄琴。この3人が奏でるガムランの音に圧倒されながら、今日はヴァイオリンパートを鍵ハモで演奏。自分が書いた曲を、初めて音になって聴くのは、本当に嬉しいときなのですが、特に、3人がこの難曲を見事にリハーサルして仕上げてきて下さっているのが、有り難い限りであります。

何が難曲かと言いますと、バリガムランでありながら、バリっぽいところがそんなに多くなくって、世界のあちこちを旅するような曲なので、普段バリガムランでは馴染みのない動きがいっぱい出てくるわけです。音も素晴らしいですが、演奏している動きも大変見応えのあるものになっています。ノリノリで演奏して下さっているので、これにヴァイオリンが入ったらどうなることか、もう楽しみで仕方ありません。

ということで、今年の最後を、このように再びインドネシアでというのが、2017年だったのかー、と感激しながら帰宅。

電車の中で相変わらず、ヘンリー・カウエルの伝記を読んでおりますが、カウエル夫妻が家族のように慕っていたチャールズ・アイヴズの伝記を書く、というのが、結構、大プロジェクト。結局、アイヴズが亡くなった翌年1955年に出版。カウエル夫妻によるアイヴズの伝記だったら、読んでみたいなぁ、と思い、ネットで注文。

さらに、読み進めると、ロックフェラー財団が、アジアにおける文化に対するサポートを始めて、1956年から57年にかけて、カウエルは、アジアの調査に行くわけです。もちろん、まず、大西洋を渡って、アイルランドに入って、ロンドン、ドイツやオーストリアを経て、トルコ。そこから、中東、インド、東南アジアと旅をして、最後に日本までという1年ツアー。

実際には、トルコ滞在中に第二次中東戦争が勃発したため、イスラエルやエジプトに寄れなくなって、予定変更があったようです。それにしても、カウエルの伝記を読むと、1930年代にソ連には行っているし、本当に一人の人の人生なのだろうか、と思うほどの仕事量。びっくりします。

Henry Cowell: A Man Made of Music (English Edition)

Henry Cowell: A Man Made of Music (English Edition)

ちなみに、今日リハーサルした曲は、ルー・ハリソンヘのオマージュなのですが、実はルー・ハリソンに「Homage to Henry Cowell」という曲があって、このタイトルを参照して、「Homage to Lou Harrison」とつけたのです。だから、カウエルとハリソンと野村が、こういう風につながる曲なのです。そして、野村の新曲は、カウエルが1956年ー57年に世界一周したように、音楽で世界を巡る曲でもあります。世界初演は、1月12日「世界のしょうない音楽祭」@豊中市文化芸術センターです。