折口信夫の「日本藝能史六講」を読み始める。こんな言葉があります。
演劇と能との関係は後で申さねばならぬが、演劇の昔の伝統を尋ねて行くと妙なことに他には行かないで相撲に行ってしまふことです。これは日本の演劇の正当なものなのです。
- 作者: 折口信夫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1991/11/05
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 16回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
きたまり、白神ももこ出演で、筒井潤演出の舞台を、京都芸術センターに観に行く。テーマは「老い」だったらしい。この二人のダンサーは31歳と32歳だ、と作品の冒頭の方で知らされて、ぼくが「ごんべえさん」を作曲したのが29歳、老人ホームでの共同作曲を始めたのが30歳の時だったので、同じ年頃なのだなぁ、と懐かしく自分の経験に参照しつつ、ダンスを楽しみました。途中で流れる老人ホームでの音を聞きながら、1999年に老人ホームにおられた明治、大正生まれの方々から聞いた歌とは違って、既に、現在の老人ホームにおられる方の多くは昭和初期のようで、世代交代が行われているのだなぁ、15年前に生きていた文化が既に過去の物になっているのか、と思い、あの時に出かけておいて貴重な時間を過ごせて、本当に良かったと思いました。そうした老いなどというテーマは結局あまり気にならず、二人のダンサーのダンスを楽しみました。そして、二人のダンサーはお互いに個性をぶつけ合って競い合うわけでもなければ、お互いを支え合うわけでもなく、淡々とヨソヨソしい仲の良さで共演していて、そのヨソヨソしい距離感や恥じらいこそが、筒井潤が大切にしたいものなのだろうなぁ、と思いました。