野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

えずこREMIX2日目 世界の生成について

午後のプログラムは、アウトリーチ(介護老人施設あいやま)。お年寄り達は、些細なことで大笑いして、この人達は女子高生かと思うほど、反応が良い。あるいは、インドネシア人かと思うほど、リアクションが良い。こちらが、お年寄りに馴染みのある音楽を一切提供しなくても、馴染みのある踊りを提供しなくても、大喜びで反応してくれる。どうして、この人達は、こんなに陽気なのか?世界を肯定する力は、どこから来るのか?

砂連尾さんと老人達の即興ダンスは、セネガルのダンスパーティーのような盛り上がりを見せた。田植えなどの労働の仕草は、シンボリックに記号化された動きではなく、実体験に基づいている強さがある。ヒルに吸い付かれ、それを取り除く仕草を、何人ものお年寄りがする。そうした細部の動きを砂連尾さんがダンスで展開していく。お年寄りの動きが主題となるメロディーだとすると、その変奏曲を砂連尾さんの体が奏でる。生きる希望に関する作品を、今日の映像から作れるなぁ、と確信する時間。「老人ホームREMIX #3」を作る題材は、集められるなぁ。

その後、ホールに戻り、昨日の夜のワークショップの映像を編集。

1)キーボード・コレオグラフィー(ピアノに走る)
2)喋り(えずこさささささ)
3)寒い
4)仕草

と短い映像を編集し、夜のワークショップでは、この映像に合わせてパフォーマンスを試みた。それぞれの参加者が映像とのパフォーマンスを模索するが、本日は子どもの参加者が多く、走り回ったり、楽器を演奏したりして、映像に集中できない環境でもあった。過去(映像)とのセッションも大切だが、現在の動き回る子ども達をいなかったことにするのは、間違いだろう。映像のエッセンスを活かしつつも、現在の我々が今をどう生きるか、を問われた。そうしたパフォーマンスをしてみた。映像の中の昨日の玉渕さんと、今日の玉渕さんの間で、即興が繰り広げられる。ゆうたさんによれば、「タイムマシーンに乗っているような感覚」という即興は、混沌と秩序の境界を行き来し、現代と過去を行き来し、時には古代にも未来にも行き、時に一人になり時に仲間と遭遇し、バラバラになったり交わり合ったりした。有機的(オーガニック)というのは、こういうことを言うのだろう。雑然としているような秩序。自然とは、こういうことか。世界とはこういうことか。

この即興の映像を上田謙太郎くんが即興で撮影してくれているので、その映像を再生し、昨日の自分達の映像に合わせて即興をした15分前の自分達の即興の映像と合わせて、もう一度即興を行った。世界はより濃厚になり、土壌は豊かになり、関わりが複雑になり、世界が生成するのを感じた。世界平和に関する一つの実験。

4日間のプログラム、これで半分が終了。残り二日、準備しプランして臨みますが、その場で変更/逸脱しながら進める覚悟を決めました。どこに進んでいくのか、楽しみです。